甘いものとマラソン。

JRTA(日本ランニングトレーナー協会)認定ランニングインストラクターの野見山健治です。

 

フルマラソンはどんなに速い人であっても2時間以上動き続ける必要のある過酷なスポーツです。

市民ランナーが多く出場する大会では、概ね5~7時間の制限時間が設けられているため人によっては走り続けられなくても最大7時間動き続けることが求められます。

そこで、当然ですが必要になってくるのがエネルギーです。

 

私たちは特殊な場合を除いて食べること、飲むことによってエネルギーとなる食物を体内に取り入れます。

主なエネルギー源は糖質、脂質、タンパク質の3大栄養素がもとになります。

 

糖質が3つの中で最もエネルギーになりやすく、グリコーゲンという形で肝臓と筋肉に貯蔵されています。
たとえて言うなら、バーベキューなどをするときの新聞紙や着火剤というところです。

 

それに対して、長時間燃え続けるのが脂質から得られるエネルギーですが、火がつくまでに時間がかかってしまいます。
「カーボローディング」という言葉を耳にしたことがある方もいると思いますが、それは最も素早くエネルギー源になるグリコーゲンの貯蔵量を増やすための手段の一つです。

ところが、グリコーゲンの貯蔵量はどんなに高めようとしても限界があり、それだけではフルマラソンを完走するには足りないのです。

 

そこは脂質やたんぱく質から来るエネルギーで補えばいいと思われるかもしれませんが、糖質は非常に重要な役割をするために、著しく減少すると身体が危険だと認識して運動をやめさせようとします。
補う暇を与えてくれないのです。

これは身体の自己防衛本能ともいえる働きで、マラソン後半に訪れる「30kmの壁」の原因とも言われています。

 

「だったら直前に食べればいいじゃないか」と思われる方もいるかもしれません。

しかし、実はこれはかなりリスキーな方法なのです。

 

世の中には「甘党・辛党」という分類をすることがありますが、ランナーにはその両方を兼ね備えている人が比較的多いような気がします。
お酒が好きで、甘いものも好きだというランナー、あなたの周りにもいませんか?

 

私はまさにそれです。

 

熱量、糖分も高くて食べやすいスイーツ系のものをレース直前に食べている人を見かけることがあります。

私自身もケーキとまではいかなくても、直前にあんぱんやカステラのような甘くて食べやすいものを良く摂っていました。

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なぜリスキーかというと、このようなものは食べることでまず血糖値が跳ね上がります。
そしてその血糖値の上昇を抑えようと、インスリンが分泌され、その結果低血糖状態を引き起こしてしまうのです。

 

それにもかかわらず直前に糖質を補給した身体は、糖質から優先的にエネルギーにしようと働きかけるので、脳のエネルギー源であるブドウ糖が枯渇状態になり、脳が疲労感を伝え走る意欲も失われてしまうのです。

これをインスリンショックと呼びます。

 

ただし、この反応は直前に食べた場合に顕著になりますが、1時間ほど運動するとインスリンの迅速な分泌はなくなりますので、それ以降には有効なエネルギー補給の手段になります。

中盤以降のエイドに準備がしてあって、あなたの身体が受け付ける状態であれば是非摂取してあげてください。

 

何より脳が喜びます。

脳が元気になれば、心も元気になります。
おやつは心の栄養剤。

 

栄養剤は、いつも飲んでいては意味がなくなりますよね。
使う場所(食べる時)をしっかりと管理してあげることが、より効果を発揮するための近道になります。

用量、用法、タイミングを上手く使って、美味しく食べて強く走れるように持っていきたいですね。