JRTA(日本ランニングトレーナー協会)認定ランニングインストラクターの野見山健治です。
運動前に甘いものを食べることについて書いた先日の記事において、カーボローディングについて少しだけ触れました。
先日ご質問をいただいたのですが、大会前の食事について気になる方は少なくないと思います。
今日はその点を少しお話したいと思います。
・・・の前に、ちょっと長めの前置きをします。
まず大会前の食事制限に関して、良く耳にするのが「カーボローディング」だと思います。
私たちの身体の主なエネルギー源は(1)炭水化物に含まれる糖質、(2)たんぱく質、(3)脂質です。
この中でももっとも燃料になりやすいのが糖質です。
カーボローディングとは、炭水化物を(元にしたエネルギー源を)ためるという意味合いで使われていることが多いですが、厳密には糖質(=グリコーゲン)をためこむのでグリコーゲンローディングといいます。
これを行う最大のメリットは、体内に蓄えておける燃えやすい糖質の貯蔵量を増やすことで長時間動くためのエネルギーを増やすことにあります。
マラソンやサイクリングなど、長時間動くことを求められる競技には重要な要素となります。
ランニングにおいて、フルより短い距離(5km,10km,ハーフなど)でもグリコーゲンローディングを行う人もいらっしゃいますが、個人的にはこの目的で行う必要はないと考えます。
※それぞれの目的によります。
では、その方法はどのようなものでしょうか。
以前では、大会前の一定期間(7~10日前)の食事内容について、前半はご飯など主食を減らした低糖質にしておいて、直前にはご飯の量を増やして高糖質にする方法が取られていました。
しかし、この方法は量を減らした分のリバウンドが起こりやすく体重が想定以上に増えてしまったり、糖質が脂質に変わってしまうというリスクが高いために現在では主流とはなっていません。
現在は、本番に向けてトレーニングの量を少しずつ減らしていき、2~3日前から糖質を多めの食事にするような方法が取られています。
いつもの食事でのご飯が1杯なら、1.5杯くらいにするというイメージで十分です。
ご飯以外にも、うどんなどの小麦粉を使ったものや芋類、果物なども合わせて取ると楽に、かつ効果的に実践できます。
数年前の「常識」が現在ではもはや使われない情報になっていたりするため、これも5年後には変わっている可能性は大いにありますが。
・・・と長い前置きでした。
それにしても、グリコーゲンだのカーボローディングだの用語がたくさん出てくると「めんどくさい!」と感じる方もいらっしゃると思います。
実践しようと思っても本などに書いてあることを全部やるのは、中には根本的に変える必要も出てくる必要があったりと大変です。
「こういう食事の管理をやってみたい!」という方に、簡単にいくつか意識してほしいポイントを挙げます。
- ご飯類の主食となるものを直前に「ちょっとだけ」増やす。
- 明確な目標のない状態での減量をしない。
- 食事の内容は、普段食べなれているもので良い。
増やす場合は「ちょっと」なら、それほど難しくないと思います。
ご飯をよそう時に、しゃもじ2回なら3回にする程度でいいのでやってみてください。
体重の調整をするために減量などをする方もいるかもしれませんが、もしやるなら1か月以上前から行い遅くても1週間前には完了させておきましょう。
直前まで行うのは身体への負担が大きいですし、何より必要なエネルギーが枯渇する恐れがあるからです。
もし目標の数字まで減らなかったとしても、「いつもより燃料を備えられている」と考えて切り替えましょう。
そして一番重要なのが食べなれているものであること。
もしかしたら、あなたが探してきたネットや本で見つけた情報は凄く役に立つものなのかもしれません。
ただそれが、「あなたに合う」方法であるかはわかりません。
今までやってこなかった新しい方法を、大事な大会の直前に試すというのはリスクの方が大きいのです。
慣れてないことを行うのは、身体の中にも、そして精神的にも負荷の高いことなのです。
今までの食生活に近いものであれば取り入れてもスムーズに移行出来るでしょうし、身体も素直に受け入れてくれるでしょう。
しかし、もし何か新しいことをやろうとするのであれば、ひとつ見送って次回に向けて取り入れていくようにしてください。
スパイスは料理に「ちょっと」加えれば、味を引き立たせたりします。
ところが入れすぎてしまうと、味のバランスを壊すどころか辛すぎたり匂いが強すぎたりと食べるのが苦痛になってしまうことさえあります。
同じようにストレスを感じない日常の食事の中に、ちょっとした量の調整や一品加える程度のスパイスを入れる。
ほんのちょっと彩った食生活で、大会に備えることをお勧めいたします。
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