塩分と糖分。

JRTA(日本ランニングトレーナー協会)認定ランニングインストラクターの野見山健治です。

 

昨日の給水の量に続いて、給水シリーズの続編です。

 

数年前のランニングブームもあって大会数は多くなってきました。
その中でも特色を出す意味もあってか、エイドで提供されるものに関して水やスポーツドリンク、ジュース類、コーヒーが出たりと距離の長さや特徴によって様々です。

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それでも水とスポーツドリンクが主流ではあります。

以前はスポーツドリンクを原液のまま、あるいは粉末ドリンクを規定倍率で希釈して提供している大会もありました。
走っている時には甘すぎて飲みにくく感じるという贅沢な悩みがありましたが、今はどちらかというと薄めて使っている大会が増えてきたように感じます。

 

量と同様に、コスト面の兼ね合いもあるかもしれませんが、濃さで給水効率も変わってくるのでこの流れは個人的には歓迎です。
では濃さがどのように体に影響するのかということに関して、今日は深めていこうと思います。

 

糖分や塩分などの成分が含まれた溶液は、濃度の低い方から高い方へと移動して濃度を保とうとします(これを浸透圧といいます)。

人間の体液は0.85%の塩分濃度となっています。

 

少し極端な表現をしますと、0.85%より低い塩分のものを摂取すれば体へ吸収され、それより高い塩分だと身体から水分が出ていくということになります。

漬物を作ったり塩もみをする際に、野菜に塩を振って水を出すのはその作用を利用したものです。

 

アクエリアスやポカリスエットといった一般的なスポーツドリンクは、この点が体液とほぼ同様に作られていて、「アイソトニック飲料」と呼ばれます。

体液に近い浸透圧であることのメリットは、その吸収速度が水などに比べて高まることにあります。

 

汗がしょっぱく感じるのは誰もが知るところなので、塩分補給の大切さは何となく頭にあるのではないでしょうか。

塩分だけでなく、糖分も大事なのです。
たとえば先に挙げたようなスポーツドリンクは甘いですよね。その甘さのもとである糖分にも意味があります。

 

実は適度な糖分は、塩分と一緒に入ってくることによって吸収を早める役割があるのです。
それだけでなく、比較的早くエネルギーに変換できる燃料でもあります。

飲みやすさという面もありますが、甘く感じるように作ってあるのには意味があったのです。

 

一般的に推奨されている糖分は4~8%とされています。

しかし、ランニングなどの激しい運動をしている場合は体内の糖分の浸透圧が下がるため、運動時には2~3%が内臓に負担を少なく吸収する目安になります。

 

ポカリスエットなら約3倍、アクエリアスなら2倍程度に薄めて飲むとちょうどこれくらいになります。
冒頭で濃さの話をしましたが、走っている最中は薄めの方が体には良いものとなっています。

 

仮に飲んだ時に「濃いな」と感じたなら、その前後に水があるはずですから軽く口に含んでみてください。※飲みすぎ注意!
そうすることで、体に優しく吸収を促すことが出来ます。

 

練習時に携帯するドリンクであれば、薄めて糖分を下げた上で塩をひとつまみ入れてください。
身体に優しいドリンクの出来上がりです。

 

市販品でも補給に良いとされているのが「経口補水液」です。OS-1という商品もあります。
風邪や脱水症など体調が悪いときだけでなく、運動時にも効果的です。

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個人的な感想として、正直美味しいとは言えませんが効果は絶大です。
美味しく感じてしまう状態は、身体がかなり水分の枯渇状態になっている時だと認識しています。

 

「わざわざ買うのもな・・・」と思われる方は、手作りが可能です。

水1リットルに対して砂糖40gと塩を3g、お好みでレモン汁を適量。

 

一度お試しください。

 

 

先に書いたように、低いものから高い方に行くので塩分0%の真水は早いのではないか?と思われる方もいらっしゃると思います。

確かに吸収はされます。
それと同時に体液の濃度が下がって行ってしまうため、かえって倦怠感や吐き気、けいれんなどを起こしてしまう恐れがあります。(=低ナトリウム血症・水中毒)

 

適度な塩分と糖分を意識することで、最後まで不調を覚えることなく走る助けになります。