走力とLT値。

「理想の姿」に向かって共に歩むパーソナルトレーナー、相支走愛(神戸)の野見山健治です。

 

健康のために身体を動かしはじめた人で、ランニングを選ぶ人は多い印象です。健康が目的だった方も、次第にいつもと同じ内容では満足できなくなり、刺激を求めて大会に出始めたり、少し速く、あるいは長く走りたいと考え始めるのは、自然なことでしょう。

もし速く、長く走りたいと思ったら、どこかに強化を目的としたポイント練習を取りいれるのが近道です。

 

具体的な話を進める前に、強化をする(=走れるようになる)って身体に何が起こっているのでしょうか。

 

LT値

ランニングにおいて走れるようになるということに関しては、LT値というものが関連してきます。このLT値とは乳酸性作業閾値を意味します。「なんじゃそら?」と思う方もいらっしゃるでしょう。まず乳酸というものは何でしょうか。

 

筋疲労を感じたときに「乳酸がたまった」と言ったりする人がいるように、一般に「乳酸」は疲労物質のように思われています。しかし、実際は違います。

確かに運動を行うことにより乳酸は確かに発生しますが、乳酸自体も運動の負荷によっては糖をエネルギー源とする際に働くのです。負荷が変化してきたときにその産生と消費のサイクルが壊れてしまうと、乳酸産生量が上回り身体が動かなく感じるのです。ここだけに注目してしまうと乳酸=疲労と考えてしまうのです。

 

産生と消費のバランスを取れる分岐点のことを「LT」と言います。

このLT値より速いペースで走るとあまり備蓄量として多くない糖をエネルギー源とするため、長時間動くことが難しくなります。逆にLT値より遅いペースであれば糖より備蓄量の多い脂肪をエネルギーとして優先的に使えるので長時間動くことが可能になるという構造です。

 

簡単に言うと、このLTの値を上げられれば疲労を感じるポイントが変わってくる→結果的に走力が上がることに繋がるのです。

 

 

LT値を上げるには

LT値を実際に測定するには専門の器具が必要ですが、一般のランナーがそこまでするかというとそうではないでしょう。多少高価にはなりますが、GARMIN社のGPS時計であれば予測値を測定することが可能です。

 

忘れてはいけないのは、現在の数値が把握できないとしても、今より刺激を与えられればLT値は変わってくるということ。

トレーニングを行うにはいくつかの原理・原則があるのですが、その中でも漸進性の原則・過負荷の原則というものは成長を求める際には忘れてはいけません。漸進性とは少しずつ前進させる(強い刺激を与える)こと。継続的に行う中でちょっと違う刺激を加えることで成長を促す必要があるということを意味しています。

これと併せて過負荷の原則は、少し強い刺激を与えることで身体が成長することを意味しています。つまり、段階的に少しずつ強い負荷を与えることが必要であるということ。ただし急激に上げ過ぎるとそれは単なる負担になり、変化するより先に怪我をしてしまう恐れがあります。

一方で、継続して行うもののいつも通りの負荷を与え続けても身体はそれに対応してしまい、それ以上の成長をしなくなってしまいます。つまり適度な刺激が成長には必要なのです。

 

ランニングにおいて、LT値を上げるために比較的取り入れやすいトレーニングがビルドアップ走です。

 

 

ビルドアップ走

ビルドアップ走は、簡単に言うと少しずつ速くしていく練習法です。

そのやり方は一定の時間や距離で区切って段階的に変化をつけていくものもあれば、徐々にじわじわと上げていくという方法もあります。(下図参照)

最初はジョギング(会話をしながら悠々と走れるペース)で初めて、最後は目標レースペースより少し速いくらいで追われるのが理想です。ですからペース配分が難しい。入りから頑張りすぎると、途中で頭打ちになってしまいペースが落ちてしまうかもしれません。

逆に、余裕を持たせすぎると身体に十分な負荷が加わらず、効果的なトレーニングにならない可能性があります。

 

先に挙げた2つのペースの上げ方のタイプでも難易度や効果が若干違ってきます。段階的に行う場合には、一度にスピードが上がるポイントがある一方で、一定間隔はそのペースを維持できるので慣れる時間が出来ます。その上げ幅を調整することで走力にも合わせやすく、同時にペース感覚を磨くことも出来ます。気持ち的に休まるところと気持ちを入れる場所を切り替えられるのもメリットです。

他方、徐々に上げていく場合には、前の1kmより上がればOKという感じでわかりやすいですが、常に上げ続けていく必要があるため心休まる時がありません。また感覚的には疲労がたまってくる中で頑張り続けることも求められるので、やりきることが出来れば辛くても頑張れる強い精神力を身につけることが出来ます。

 

 

ビルドアップ走の効果はLT値、心肺機能と共に筋持久力にも刺激入れになるだけでなく、ペース感覚も磨けますので、一回り強くなるには非常に効果的なトレーニングです。

ただし先にも触れたとおり、自分だけで行うと上げきらずに不完全燃焼になることも…そういう時には周りの力を借りてみましょう。

6月23日(土)には6段階ビルドアップを行う予定です。

ぐるぐる みなとのもりマラソン練習会 【ビルドアップ走】presented by 相支走愛 – 動きづくりとアップの後、6分30秒/kmペースでスタートをして3km毎にペースを上げてラスト1kmはフリー走で走ります。
周回コースで行いますので、各自無理なく行けるところまでチャレンジが可能。途中で切り上げることも出来ます。https://moshicom.com/18403/

場所は周回コースですので、途中で休憩を入れたりも出来ますし、万が一力尽きた場合にもはぐれることがありませんので、そういう意味でも安心です。

ステップアップに使っていただければ幸いです。