JRTA(日本ランニングトレーナー協会)認定ランニングインストラクターの野見山健治です。
ここの所、マラソン界でも衝撃的なニュースが飛び交っています。
世界では、昨年のリオデジャネイロ五輪の女子マラソンでケニアに初の金メダルをもたらしたスムゴング選手がドーピング検査で陽性反応になったという報道がされました。
世界を揺るがす…というと大げさかもしれませんが、マラソン界には激震と言っても過言ではないと思います。
一方、日本国内のニュースで私が驚いたのは、東洋大学時代に箱根駅伝で圧倒的な走りと存在感を示し「山の神」とさえ呼ばれた柏原選手の引退です。(個人的にはアマチュアの選手にこういう呼称を付けるのは好きではありませんが…)
箱根駅伝のスターとな(ってしま)った彼が感じていたであろう、周囲からの期待やプレッシャーは彼以外には理解できないものです。
全てが想像でしかないので、もしかすると逆に全く感じていなかった可能性もゼロではないですが、恐らくメンタル面では相当の負担を感じていたでしょう。
そういったメンタル面でのものも多少なりとも影響はあったとは思いますが、それ以上に度重なる怪我が原因と報道されています。
彼自身、アキレス腱痛や腰痛といった故障を抱え、もう一度大きなけがをしたら競技人生に区切りをつけると決意をしていたようです。
その結果、「治療やリハビリに専念してきたが、回復する見込みがない」と判断し引退に至ったとのことです。
私たちにも当てはまること
彼らのような実業団などのトップ選手は、本人が休みたくても休めないという状況もあるかもしれません。
走力以外のそういう見えない面もあるので私たちのような市民ランナーを比べてはいけないかもしれませんが、ランナーという大きな観点からすると見逃してはならない点があります。
「継続は力なり」という言葉がありますが、長距離の種目は特に「積み重ねこそ力の元」と信じられています。
だからこそ不調や違和感、あるいは怪我を抱えていても休むという選択肢を取ることに対してより勇気が必要です。
実際に痛みを抱えていても「動きながら治す」と言って、休まない人をあなたも見たことがあるでしょうし、もしかしたらあなた自身がそうかもしれません。
症状の度合いや場所によっては、それもひとつの方法ではありますが、それが怪我であればやはり回復させることを念頭に考える方が良いのではないかと考えます。
骨折などの明らかな怪我なら休まざるを得ないですが、違和感や軽い痛み、走っていれば収まる(ように感じる)ものは走りながら治すという方が少なくありません。
実業団ランナーと違って、休もうと思えば休める環境なのに、です。
次のレースが人生をかけるほど大事!という方もいるかもしれませんが、ごく少数でしょう。
そういう意味ではいっそ走れないほどの痛みの方がいいのではないかとさえ思ってしまいます。(本当にそうなれ、というわけではありません)
そんな時、自分に問いかけてください。
「自分は何のために走っているのだろうか」
もちろんタイムを伸ばしたり、距離が長くなっていくことには誰もが喜びを感じます。
しかし、多くの市民ランナーにとっては走ることは仕事ではなく「趣味」ではないでしょうか。
いつも苦しみながら行う趣味、楽しいですか?
少なくとも私は楽しいとは思えません。
もちろん苦しみの先には成長があるというのも事実ですが、追い込む場所は練習だけで良いと思うのです。
身体を気にしながら、不安を抱えながら走っていても、心から楽しいとは思えないのではないでしょうか。
おかしいと感じたら、休むのも大事。
市民ランナーに引退はありません。
趣味だけでなく、日常も長く楽しめる身体を持つためにも、身体の声を大事にしてあげてください。
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