「初めて」の中で。

「理想の姿」に向かって共に歩むパーソナルトレーナー、相支走愛(神戸)の野見山健治です。

 

新型コロナウイルスの影響で各地の大会やイベントなどが大きな影響を受ける中、本日大阪国際女子マラソンは開催されました。前もってのPCR検査など出来る対策を十分に講じた中で舞台が整えられました。

そのために大きな変更点を作るなど、運営側の「開催するにはどうするか」という工夫が見られたように思います。昨日も少し書きましたが、安全を考慮するのは大前提ですがそのうえで「やるかどうか」よりも「どうやったら出来るか」という思考を大事にしたいところです。

 


その工夫の結果として、通常の大会とは違う点として注目する2つのポイントがありました。

 

1つはコースの変更。従来の市内を通るコースから、長居公園の1周約2.8kmを使用した周回コースに変更(参考記事:意志と準備)。周回コースは走りやすい場所が多い(実際に長居公園はほぼ平坦)です。距離感も掴みやすい。ただ気分転換をしながら走るタイプの場合には単調なコースが仇となる場合も考えられます。私は苦手…って誰も聞いてないか(笑)
一長一短ですが、これがどう出るか。

 
さらにその公園はフェンスで周囲を囲うことで「応援自粛」ではなく実質禁止に近い措置を取っていたようです。コース変更に加えてこうした対処を考えた方とその作業をした人たちには頭が下がります。残念ながら誰もが思慮深い行動をとれるわけではないので、お願いベースでは限界がありますからね。そういう意味では賢明な判断だったと思います(実際に隙間からでも覗こうとした人さえいたらしい…)。
こうした行動が運営や選手たちの思いを踏みにじる行為に当たる恐れがあるということをどれだけの人が考えていたのか?と思うと残念な気持ちになります。

 

…明るい気持ちにはならないので話を変えましょう(笑)
2つ目の注目ポイントは、国内の女性限定レースに於いてはかなり珍しく男性ランナー6名がペースメーカーを務めるということ。選手レベルの場合、筋力の違いもあるので男性の方が女性より速いタイムで走ることができます。同じペースで走るにしても余裕度は大きいはず。安定したペースで走ってくれるのではないかという期待を持っていました。
さらに多くの大会では長くても30kmまでで外れることが多いですが、第1ペースは40kmまでは引っ張る予定とのこと。ついていける選手が複数いたら面白い展開になるのではと。

 
ただペースメーカーが高い水準で引っ張るということは、相当の地力が必要とされます。フルマラソンにはペースの変化が出て当然という要素があります。選手によって前半タイプ・後半タイプなど少なからずありますので。私自身がペースメーカーを務めることもありますが、一定で走るのが強度的には最も難しいのでは?と感じています。

そして長い距離を引っ張ってもらえるということは、選手間での駆け引きやペースの変化は生まれにくい。スピードタイプよりはじっくり我慢が出来る(でも高い水準で)方が有利なのではないかと予想。

これらの「初めて」を選手たちがどう乗り切るか楽しみ。

 

予想通りと予想外

ペースをつかんでからのペースメーカーの安定感は素晴らしかった。女性にとってはこのペースはかなり速いので40kmまで引っ張れといっても容易ではなかったはず(男性選手にとっても決して楽ではない)。

それでもこれは予想というか期待通りでした。レベルも高い経験豊富な選手たちでしたから。

 

 

予想外だったのはすでにオリンピック代表内定をとっている前田穂南選手が13km過ぎの早い段階でもう一人の有力選手一山麻緒選手から後れを取ったこと。競る相手がいるかどうかで心理面も含めて全く違ったものになるからです。

 

それでもペースメーカーは選手への声掛けはもちろん、画面で見れた先頭を引く2名(岩田選手・川内選手)と遅れた前田選手を引いた(田中選手)と臨機応変にサポートする姿もさすがだと感じました。マシーンじゃないから出来る最高のペースメイク!きっと後続グループのペーサーも同様のサポートをしていたのではないかと思います。

遅れ始めた前田選手には第3ペーサー田中飛鳥選手がつく動き

そんな展開において、同じく中盤から苦しい素振りを見せながらも大崩れをしなかった一山選手は2時間21分11秒と18年ぶりに大会記録を更新して優勝。実は前日に走っているところに出くわしておりひそかに応援していました(笑)
2位に入った前田選手もあれだけ早い段階で遅れたにもかかわらず、しっかり粘って2時間23分30秒の自己新記録で2位のフィニッシュ。普通なら序盤で遅れたら気持ちが切れそうなものですが、これは間違いなく今後に繋がる内容になったと思います。いや、繋げてほしい。

 

3位の阿部有香里選手と4位の上杉真穂選手は自己ベストをそれぞれ4分近く更新する24分台でゴール。
様々に変わった環境を乗り越えた選手たちは素晴らしかった!お疲れさまでした!

 

こうした「初めて」の経験は大きな糧になるはず。それぞれが生かして次につなげてほしいと思います。

 

 

「日本新記録に届かず」という表現が目立ちますが、そんな簡単に出るわけない。出ないからこそ価値がある。見出しで注意を引きたいのはわかるが、今の選手、記録保持者、競技者全てに失礼。
次のチャレンジに期待。

ひっそりと世界記録が生まれている

そしてもうひとつ知っておいてほしいことが。

知る人ぞ知る弓削田眞理子選手。女子60歳以上のマラソン世界記録保持者です。従来の記録は自身の持つ2時間56分54秒でしたが、今回なんと4分以上更新し、2時間52分13秒で完走!

 

自己ベスト更新、つまり世界記録更新! 

先に挙げた阿部選手、上杉選手もそうですが、この次元で4分というのは…とんでもない更新幅です。もうね、すごいとしか言いようがない。

 

弓削田選手がフルマラソンでの記録を伸ばし始めたのも晩年になってからだったはずです。60歳近くになって記録をグングン伸ばし、世界記録保持者に…

 

環境や身体の土台、経験も全てが異なりますから、単純に比べたり当てはめることは出来ませんが、簡単に年齢を言い訳にすることは出来なくなりますね(笑)

これを励みに頑張ろう!