「理想の姿」に向かって共に歩むパーソナルトレーナー、相支走愛(神戸)の野見山健治です。
無観客開催を経ての大相撲の7月場所。制したのは今場所14場所ぶりに幕内に戻ってきたばかりの照ノ富士でした。誰がこの結果を予想できたでしょう。
優勝旗の授与が師匠とは…この巡りあわせも凄い。
かつては大きな体を生かしたパワフルな(時に強引な)取り口で大関にまで駆け上がり、次の横綱とさえ評されました。本人の言葉を使えば「イケイケ」の時。やればやるだけ結果が出ていたし、その自信が表情にも表れて画面越しでもふてぶてしさを感じさせるほどでした。
ところがその豪快なスタイルも影響したのか、膝を中心とした怪我の連続。そして肝炎や糖尿病など内臓疾患を抱え大関を陥落。さらにはそこからわずか1年でちょっとで幕内、十両、幕下、三段目、そして序二段にまで…。転落どころか垂直に落ちていってしまいました。
師匠である伊勢ケ浜親方にも何度も引退を伝えたとのこと。その都度「やめるにしても(身体を)治してから」と説得され辞めることを踏みとどまっていた状態でした。
出場することが美徳とされている印象のある文化が残る中、本人も「付き合いながらやるしかない」と土俵に上がることにこだわっていました。それでも親方はしっかりと休み、身体を向き合えるように勧めたわけです。中途半端に出続けるのではなく、休むという選択をしたことが再起に繋がった要因の一つかもしれません。
ちなみに右が怪我や病気が重なり十両から陥落する直前の場所。表情はもちろんですが、顔や身体の張りなど全く別人とも思えるほどでした。
大関だったとき不調にもかかわらず出場をすることを選び、13連敗を喫したことがあります。怪我などを悪化させるおそれがあるので必ずしも出ることが良いとは言えませんが、この出来事からも本人の気持ちの強さを感させます。
下から上がってくる時には「横綱でも味わったことのない(下から上がってくる)楽しさを2回も味わっている」と話していました。心中穏やかではないとは思いますが、考え方によって目線を切り替えるのは技術。上手い。
そして一度落ちたことで「つらい時に誰が一緒にいてくれたのか」と周りも見えるようになったとも話しています。優勝時のコメントでも応援してくれる人への感謝を伝えています。
以前の力任せのふてぶてしさから、力強さに心の余裕を兼ね備えた「芯(真)の強さ」を身につけたように思えます。
これで終わりじゃない。まだ膝には不安があるのは動きを見てわかりますが、それでもこれだけできる。この先も期待をしてしまいます。
インタビューで「いろんなことがあって最後に笑える日が来ると信じてやってきた。一生懸命やればいいことがあると。やってきたことを信じてやるだけだと思っていた」。
この言葉をこれ以上ない形で体現したわけです。笑顔が見られてこちらも嬉しかった。
そして第一声が「続けてきてよかった」。
自分が、周囲が笑える日を手繰り寄せる。
続けること、やってみませんか。