数年間の結実。

「理想の姿」に向かって共に歩むパーソナルトレーナー、相支走愛(神戸)の野見山健治です。

 

いろいろと議論を呼ぶ中、開催された東京マラソン。走る選手には何の問題もありません。難しい環境ではありましたが、彼らが「やりきった!」と思える結果になることを期待しながらテレビ観戦。

気温11度くらい、風も1m程度と比較的動きやすそう(ちょっと気温が高いかも?)なコンディション。まずは車いすの部からスタート。

こちらもかなり少なくなりましたが、それでも代表クラスが出ていますので記録に期待。

 

そして男女エリートの部がスタート。

注目は何と言っても男子のオリンピック出場枠争い。2時間5分49秒以内でゴールする選手が現れた場合、MGCで3位だった大迫傑選手に代わって代表権を獲得できます。

日本記録が必須とあって、勝負以上にタイムにこだわらなければならないので高速レースが期待。

 

大迫選手からすれば、日本人選手に負けなければ代表権を奪われることはないわけです。でも負けて選ばれるのは彼の性格を考えると許せるものではないはず。どうなるか!

想像以上にハイペース

始まってみると予想通りの速い展開。むしろ想像以上に速いペースに大集団が出来ていました。

第1集団は2分55秒/kmほどを刻む。これは2時間3分前後でゴールするほどのペース。そこに積極的につけたのは井上大仁選手と大迫傑選手。

 

第2集団も2分58~3分/kmでしたから、このペースを維持できれば日本記録更新が狙えるハイペース。ここには有力選手と見られた選手たちがひしめき合っていました。思った以上の人数。
やはり選手たちの今大会における「記録」へのこだわりは一段と強そうでワクワク。

 

 

レースは大きな動きはないまま序盤は進みます。10km過ぎて第1集団が少し停滞したこともあり、一つの画面で第2集団まで見れるくらいの約100mほどの差で15kmも通過。
20kmを過ぎても概ねその隊形は変わらず、第2集団にも20名以上が残る展開。

 

中間点を過ぎて第1集団に変化が。ペースメーカーが3人いたのですが1人が遅れていき、1kmくらい先でもう1人もいなくなり1人だけに。

すると風を気にしてか隊形が縦長になり、ペースも少し引き上げられました。そこから遅れた形になったのが大迫選手。

 

25km地点ではsplitが10秒以上速くなったこともあり、先頭と100mほど離れました。井上選手はまだ前の方について粘る展開。

大迫選手と第2集団との差は20秒程度。まだまだわからない。

 

 

先頭集団は2分台の記録を持つレゲセ選手ら4名が抜け出す形に。積極果敢な走りを見せた井上選手もこの5km14分27秒には着いていけず、新たな第2集団を形成する。そこからさらに遅れて大迫選手が単独走ながら追い上げてくる展開。
その大迫選手の背中を中盤までの第2集団にいた菊地賢人選手が猛追。さらに20秒ほど遅れて日本人選手が多くいる集団と変わりました。この集団もまだ速い。

 

 

このまま行けば4分台の記録の可能性もあったので、井上選手が代表権を獲得するチャンスが出てきた。大迫選手ピンチ。

 

 

しかし、ここから圧巻の走りを見せたのは大迫選手だった。
じわじわと前の集団との差を詰めて、30km過ぎで追いつく。いったん休んで全体の様子を見る。

井上選手の後ろについてから、横に並び様子を伺ったのちに…

 

 

一気にスパート!

抜け出す瞬間に手で何かの合図をしているようにも見えた。苦しい表情の井上選手を見てここだ!と思ったのでしょう。

 

さすがの冷静さ。後でのコメントでわかりましたが、前半「速い」と感じて25km辺りで意図的に自分のリズムに落ちつけたとのこと。この臨機応変の対応力は凄い。

 

前に出た大迫選手に4名がついていくが、その中に井上選手の姿はなく差はみるみる開いていく。35kmまでの5kmを全体2位のタイムに引き上げた大迫選手は先頭にこそ迫れないものの、アブディ選手と並走して後続をどんどん放していきました。

 

ついていけなかった井上選手に巻き返す力はさすがになさそう。一時迫ってきた菊地選手も勢いに陰りが出て、追いつくところまでは難しい展開に。

 

 

ここからは細かく時計を見ながら走る大迫選手の姿。記録を意識して計算して走っていたのでしょう。

終盤はわき腹を押さえる仕草もありましたが、大きくペースを乱すことなくしっかりと粘って…

 

ゴール前の直線に入ったところに時計を見て確信したのでしょう。大きなガッツポーズと咆哮と共にゴール!

日本人最上位でのゴールは、2時間5分29秒で自身の日本新記録更新!

 

興奮しました。いや、凄かった。

 

 

大迫選手が遅れたときに井上選手が先頭集団で戦っていなければ、きっとこの記録は出なかったと思います。大迫選手も記録を狙って走っていたので「人」への意識はそこまで強くなかったかもしれませんが、日本人選手が前にいる状況だけはどうにか回避しないといけなかったはず。

井上選手の積極的な走りは、少なからず影響したのではないでしょうか。

 

 

ちなみに優勝は2時間4分15秒のレゲセ選手。35kmくらいまで大迫選手と並走をしていたアブディ選手が追い上げて2位の2時間4分49秒。

このあたりの選手とは勝負さえさせてもらえなかった印象。世界は強い…

 

 

しかし、日本の底上げは形になりました。他の日本人選手は、第2集団で我慢していた高久選手が2時間6分45秒。上門選手が2時間6分54秒。

まさか6分台がさらに2名も出るとは!

 

これに留まらず、定方選手7分5秒、木村選手7分20秒、先日ハーフマラソンで日本記録を更新した小椋選手も7分23秒(参考記事:壁を越えた先に)。

まだまだ続き下田選手7分27秒、菊地選手7分31秒、一色選手7分39秒、設楽悠太選手7分45秒と7分台7名!(このあたりまで選手とチームにボーナスが支給されます。)

 

さらに8分台5名、9分台4名。サブテン(2時間10分以内の記録を出すこと)が1レースで19名も。

 

 

女子はロナー・チェムタイ・サルピーター選手が2時間17分45秒で優勝。2位のベルハネ・ディババ選手までが従来の大会記録を超えるタイムでした。

男子車いすの鈴木朋樹選手は1時間21分52秒で優勝。女子車いすは喜納翼選手が1時間40分0秒で優勝。どちらも大会記録更新。

 

このあたりを考慮してもコンディションがかなり良かったのかもしれません。

 

 

仮にコンディションが良かったとしても、男子マラソンにおいて数年前のサブテンさえ国内ではなかなか出なかった状況からすると、誰がサブテン19名が1レースで出るなんてことを想像したでしょうか。

 

MGC効果、そしてメンタルブロックの崩壊は確実に選手の背中を押していると思われる結果でした。
大学生が上位に入ることも出てきましたし、この日も國學院大の土方選手がサブテン。世代広くこの数年間の取り組みが、記録という形として実を結んだといえるのではないでしょうか。

 

 

井上選手は最終的に9分34秒で全体の26位。でも走り終えた表情はどこか晴れやかに見えました。きっと「出来ることはやりきった」というような気持ちがあったのではないかと。凄い戦いでした。

えぇもんみせてもらった。

 

 

もし大迫選手が上位に入れず、記録も奮わなかったことを考えてみてください。別の選手に負けていてもその記録が日本記録に及ばなかった場合は大迫選手が代表枠を獲得できたわけです。
でもそうなったときに「本当に大迫でいいのか?」という議論は少なからず出たと思われます。リスクもあった出場という選択。

 

他の選手は日本人トップかつ日本新が条件だったのに対して、日本人トップでさえあれば良かった大迫選手は有利にも見えるかもしれません。しかし、そんな余裕はなかったはず。

 

  

それをこれ以上ない形で「やっぱり大迫だ!」と誰もを納得させられるだけの結果。

プレッシャーがかかる中、本当に素晴らしい!何よりメンタルが凄いと思う。

 

 

まだ来週にびわ湖毎日マラソンが残されていますが、大迫選手が最有力になったことは間違いない。これを超えてきたらもっと盛り上がるでしょうね。密かに期待。

 

 

 

 

蛇足。
ゴールで好記録で飛び込んできた選手の名前を間違った実況・解説陣。修正せいよ!一生懸命に取り組んでいる選手や関係者に失礼だろう。
間違うことは誰にでもあるけれど、そのあとのフォローがなく気分悪かった。ヒーローを一人作ることだけが仕事なのか?そんなのワイドショーに任せとけばいい。
ここのところ毎回質の低さを感じる。

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