「また」と言っていられない。

「理想の姿」に向かって共に歩むパーソナルトレーナー、相支走愛(神戸)の野見山「理想の姿」に向かって共に歩むパーソナルトレーナー、相支走愛(神戸)の野見山健治です。

 

先日の全日本大学駅伝に続いて、今週は実業団女子選手のプリンセス駅伝が行われるなど駅伝シーズンが始まりました。

走るプリンセス…??

 

個人的には、駅伝は通常のトラック競技やマラソンに比べても実力通りのパフォーマンスを発揮することが難しい競技だと思っています。それが良い方に働く選手もいれば、そうじゃない選手もいる。特有の雰囲気からの心身にかかるプレッシャーが大きいのかもしれません。
予想がつかない展開になるからこそ面白さの1つではないかと思います(競技する側はしんどくてたまらないと思いますが)。

 

アクシデントも含めて何が起こるかわからないハラハラと緊張感は楽しみですが、「悲劇」は見たくないし期待もしていません。
ただ今回「も」悲劇と言えるような展開が起こりました。

 

最終6区の残り約1km地点、予選突破順位以内で来ていた京セラの白井選手が走れない状況になりました。走行時に左の大腿骨を骨折し転倒をしたのです。
そのままうずくまり棄権となりました。少しでも早い心身の回復を願うのみです。

 


同大会では、過去に脱水症状で意識が朦朧としたことで棄権に至ったり、今回同様に走行中骨折をして四つん這いで膝から出血しながらタスキをつないだことも話題になったことがありました。(参考記事:成果と課題

 

 

「また」と言われても仕方がないほど、あまりにも同じ大会で起こりすぎている気がします。

 

「また」をなくすために

小学生から駅伝はあったりしますが、特に注目が集まり一般の方の耳にも入るのは高校以上ではないでしょうか。
男子も女子もそれぞれ高校、大学、実業団など各カテゴリー別に大会が行われており、中継などで見ることが出来ます。日本人にとっては非常になじみのある競技の1つだといえるでしょう。

 

  

今回のプリンセス駅伝は各チーム6名で31チームなので走行する選手は186名(予備登録などは含めず)。
たとえば男子の実業団の大会「ニューイヤー駅伝」は7区間×37チームで259名。大学の箱根駅伝の場合は10区間×21チーム(学連選抜含む)で210名。

 

全体の参加人数が少ない割に、棄権を余儀なくされるようなアクシデントの発生率は男子よりも明らかに高い。
一人当たりの走行距離も短く長距離選手にとっては決して長い距離とはいえない区間設定(中には中距離専門の選手が出たりするので一概には言えませんが)で、コースに関しても男子よりは難しさはない設定であるにもかかわらず、です。

 

一度だけなら「アクシデント」で済むかもしれませんが、こう毎年のように繰り返されるのであればそれは対策を練らなければいけないと思います。
 

 

私が考える原因は大きく分けて以下の3つです。

①時期的なもの
冬場に比べると朝晩やその日の前後との気温差が大きく、夏場に比べると涼しいものの気温差が負担になりやすい。
今回も20℃を超えており、普通に過ごすには快適かもしれませんが、駅伝のような強度の高い運動をするには十分に脱水等のリスクをはらんでいるといえます。

 

→何年も続けてこうした状況が出ているのであれば、場所・開催時期を変えるなど出来るはずです。
そこにお金とか伝統とか「オトナ」の事情があるんでしょうけれども、選手の命とどちらが大事ですかという話です。(後者であると信じています…)

 

 

②女性特有のもの
先に触れたように同様の骨折による悲劇は2018年にも起こりました。
ランニング動作はジャンプと接地の連続ですからかなりの衝撃が骨・関節・腱・筋肉に繰り返しかかり続けます。とはいえ、男子選手の同じような場面を目にすることは女子選手よりは少ない。

 

これには女性には月経があることが関係しているとも考えられます。
月経によりホルモンバランスが保たれて(その逆ともいえる)行く一方、バランスが乱れると無月経になる恐れがあります。

無月経の原因は、先天的なものの他、ストレスや疲労によるホルモンバランスの乱れや過度な減量(肥満の場合も)などいろいろあるとされていますが、選手の場合にはその中ではストレス・疲労・減量の可能性が高いでしょう。

 

 

無月経になると、頭痛や吐き気、めまいなど自覚できる症状の他、骨密度にも影響があると言われています。十分な骨密度が形成されなかったため、疲労骨折を起こしてしまったという可能性は否定できません。
今回や過去に同様の出来事を経験してしまった選手が無月経であったかどうかはわかりません。ただ十分にその可能性はあり得るのではないかと思います。

 

→すでに実施はされているとは思いますが、そういった専門のアドバイザーなどを置き、普段から客観的な把握と情報交換を出来るようにするのが「当たり前」にしておくことが出来たら良いのではないでしょうか。

 

 

③言えない状況

たとえば転倒をした拍子に怪我をしてしまうような突発的なアクシデントは予防は出来ません。
ただ②で挙げたような状態や体の不調など普段の生活から何らかの予兆がある場合には、自分から申告したり周りが気付いたりと出来るのではないかと思うのです。

 

しかし、普段の様子を見ている(はずの)コーチや監督、トレーナーが異性だったり、同姓でも理解をしてもらいにくい場合はどうでしょうか。
チームの人員が少なく、自分が出られなくなったらチームの出場が出来ないという場合はどうでしょうか。(実際にチームが7名で今大会の6区間に挑んでいるチームもあったようです)

 

不調に気が付いていても、言いにくいことはあるのかもしれません。
それもひとつの責任感かもしれませんが、そんな大きな責任を1人だけが自分の人生かけてまで背負うのはまた違うような気もします。

当事者になったら、こんな考えは甘いと言われるかもしれませんが、選手あってのチームであり大会。

 

一人の個人を守れない(犠牲にする)チームは、存在しなくてもいいんじゃないかとさえ私は思います。

 

 

 

そして最後にマスコミ。
こういった悲劇を美談にするのもおかしい。

「こんな状態でよく頑張った」というマスコミの論調を見たりすることもありますが、そんな状態で頑張らないといけないことが異常なのです。
選手も人間ですし、安全があって初めて成り立つのがスポーツ。

 

繰り返されないような工夫を業界あげて進めていく必要があると思います。

視聴者も関係者も、そして何より選手自身が安心して楽しめる、そんな環境になってほしいと願います。