最高峰から学べる。

「理想の姿」に向かって共に歩むパーソナルトレーナー、相支走愛(神戸)の野見山健治です。

 

今日行われた第72回福岡国際マラソンにおいて、服部勇馬選手が2時間7分27秒の好記録で日本人選手14年ぶりの優勝を果たしました。12月にもかかわらず気温が20度を超える中、終盤に崩れることなく苦しい場所で後続を突き放す「強い」勝ち方。

ずっと暑い時期にこの気温ならまだ多少は対応しやすいはずですが、一度涼しくなって再度気温が上昇してきたことを考えると、身体にかかる負担は小さくなかったはず。そんな気温での35kmからの5kmを14分40秒でカバーした上でのこの記録は圧巻です。

 

日本男子マラソンが低迷をしていた時期には2時間10分を切る「サブテン」さえなかなか出ない時期がありましたが、今年に入ってはそれが嘘のように続々と出ています。(参考記事:高めあう。)日本歴代記録の上位10傑の中に、2018年の記録が4つも入っていることを考えると、いかに「動き出したか」がわかるのではないでしょうか。

 

 

何が決定的な引き金になっているかは正確にはわかりませんが、MGCという制度が出来て東京オリンピックへの明確な道筋を示せたこと。自国開催のオリンピックへの出場に向けて目標を設定できたことが大きな効果をもたらしていると考えられます。

また正直なところ、日本新記録を出すと1億円もの報奨金があるということや、実際に日本記録を越えた選手がいることが各選手に大きな精神的な刺激を与えていることでしょう。

 

「この記録は無理」というメンタルブロックを外すことを出来ているかどうかが結果に影響するであろうことは想像できるでしょう。「出来ている人がいるなら、自分にもきっとできる!」と思える材料があれば、メンタルブロックを外すことは難しくないかもしれません。
その対象が過去の人や知らない人であればなかなか実感が得にくいかもしれませんが、実際に一緒に走ったことがあったり競い合っている世代なので、その身近さがなおさら拍車をかけている可能性は十分に考えられます。

 

すでにMGCへの挑戦権を持っている故障明けでも4位に入った設楽悠太選手、終盤の粘りを見せた園田選手や川内選手なども大崩れをすることなく「らしさ」を見せてくれたので、本番に向けて楽しみがまた増えました。

 

取り組みは違う

全てのトレーニング内容がわかっているわけではありませんが、今年日本記録を更新したナイキオレゴンプロジェクトの中でスピードを主に磨いている大迫傑選手、30km以上の距離は走らない中大会を高いレベルで取り組み調整を加える設楽悠太選手、そして今回勝った服部選手は40km走を何度も行って「慣れて」いくことをトレーニングに組み込んでいたとされています。

他にも6分台を出している井上大仁選手などを見てみても、それぞれ(実際はわかりませんが)聞く範囲では違ったアプローチを取っているようです。でも結果がそれぞれに出ています。このことからもマラソンのトレーニングにおいて絶対的に「これ!」というものはなく、それぞれの特性に合わせた取り組みをしていくことが目標への近道ではないかと改めて感じました。

 

…まぁ、自分に合った取り組みを見つけるのが何より難しいのですが。

 

今回の服部選手は終盤で失速してしまうことから走り込みの距離や回数を増やしつつ、動きの質を落とさないことでトレーニング。さらには発汗量が多いという特徴を把握したうえで、それを補うべくスペシャルドリンクは中身の異なる2種類(OS-1とCCD)を準備して対策を練っていました。

 

 

このように何が合っているかを見つけるためにも、今の自分を把握することはとても大事です。何が出来ていて、何が苦手なのか。感覚ではない人に説明できる何かを持っていればそれを強みにしていくことが出来るはずです。

それはレベルが違っても市民ランナー一人一人にも同じことが言えます。まずは今の自分の走りだけでなく身体自体がどのような特性を持っているのかしっかりと掴んでみましょう。

 

今の自分を知ることが成長の一歩目です。