30kmには壁はあるのか?②

「理想の姿」に向かって共に歩むパーソナルトレーナー、相支走愛(神戸)の野見山健治です。

 

前回の記事では主にメンタル面について記しました。(参考記事:30kmには壁はあるのか?①

 

今日はフィジカル面についてです。

先日、私が年明けにお手伝いさせていただく30km走のイベントのご紹介をしましたが、よく聞くのは「30kmの壁を越えるために30km走をする」という考え。

もちろん長い距離(時間も)を走った経験がない方なら、知らないより知っていた方がメリットの方が大きいのでやっていて損はありません。(ただしダメージは大きいので、やるタイミングや前後のスケジュールには気をつけましょう)

 

しかし、30kmを走りきれたから「壁」を感じないかというとそうでもありません。

私は前の記事では壁そのものがないと言いましたが、今回は壁があるかのように書いています。どういう意味で書いているのか読み進めていただければと思います。

 

フィジカル面

30kmの壁の主な原因は、筋持久力の不足とエネルギー不足を可能性として挙げることができます。

 

1つめは筋持久力の不足。

これは簡単に言うと走力が伴ってないということです。序盤のペースが速すぎたかもしれません。スタミナというより長時間動き続けるための脚が出来ていない場合に起こり得ます。支える身体が出来ていなければ、どんなにエネルギーを効率よく摂っても身体が働いてくれません。

 

もし中盤からペースダウンをしてしまったのに、ラスト2kmあるいは知り合いの顔を見たときにペースアップが出来るのであれば、これに該当すると思われます。

 

たとえば1km6分ペースで走りきろうと考えていたとします。42kmもの距離をそのペースで走るためには、それより短い距離は余裕を持って走れないと難しいことはわかりますよね。目安として21km(ハーフマラソン)を5分35~40秒くらいで「走りきる」ことが出来るかどうかが見極めポイント。余裕をある程度持ちながら達成できれば可能性が拡がってきます。

30km走であれば、5分45~50秒くらいをキープして走りきれるか。または6分ペースを維持して「余裕度」がしっかりと残っているのか。その日の身体や気候のコンディションも関係しているので一概には言えませんが、もしいっぱいいっぱいだったら下方修正したほうがより楽しめる展開になると思います。

 

ペース配分を適正なものにすることにより、壁を取り除ける可能性が高まります。ただし、これを確かめるトレーニング(あるいは大会)は全ての人にとって負荷が高めなものになります。行う時期は3週間前くらいまで、どんなに近くても2週間前までには終えておきたいものです。

 

 

2つめはエネルギー不足。

身体を動かすには筋肉の働きは必須です。その筋肉の原動力はグリコーゲン。これを源として回路が働きます。ところがグリコーゲンには身体に蓄えられる最大量がある程度決まっています。(※この量を最大限まで増やそうというのがカーボローディングの目的。ただし部位別に貯蔵量があるので、その効果には限界があります)

 

スタート直前まで食べるようにしている方もいらっしゃると思います。しかし、スタート地点に20~30分くらい前に入ることを求められる大きな大会においては荷物預けを考えても1時間前までが限界でしょう。

そこから4時間でゴールする人であっても、5時間は食べることが出来ません。もしスタートから逆算して2~3時間前に食事を終える方であれば、6~7時間も食べない状態で長時間身体を動かすのです。それだけの時間、走り続けるだけのエネルギーを身体に蓄えることは不可能です。いかに水分や補給食で補うことが出来るかという点が、気分転換を含めても重要なカギになります。

 

ですから、エネルギー補給を合間に出来なかった場合、あるいは補給をしても効率よくエネルギーに変えることが出来なかった場合には、ゴールをする前にエネルギーの枯渇状態に陥り、身体が動かなくなることが起こります。

「即効○分」と謳っている商品もありますが、運動中は消化器系の機能の優先度が下がるため、必ずしもエネルギーに変えられるかと言うと個人差もあります。

 

もしゴールが見えているのに走ることができない、脚は痛くないのに身体が動いてくれないという場合は、こちらに該当するかと思われます。

 

この点に関しては、トレーニングの段階で距離よりも「時間」が重要になってくると考えています。走るペースや走る距離よりも長時間「動き続ける」ことを身体に覚えさせることが効果的です。

 

ランニングであればもっとも効果的ですが、そこまで時間を取れないという方もいらっしゃるでしょう。でしたらハイキング、なんならウィンドウショッピングでもいいです。マラソンを走りきるであろう時間と同程度を、座っての休憩をすることなく動き続けることで身体を動かすことを脳と筋肉にインプットさせます。

もし日常が立ち仕事であれば、この点を意識するだけで仕事がトレーニングの場に変わります。

 

 

この2つをフィジカル面から見た壁の正体と考えます。

壁と言えば壁に思えるかもしれませんが、今の自分に合ったペース配分やエネルギー補給を行うことでこの壁を取り除くことは出来ます。越えられなかったり、必ず現れる壁というわけではないのです。

 

 

エネルギーに関して、ちょっとした落とし穴もあるので、その点はまた改めて記したいと思います。