「理想の姿」に向かって共に歩むパーソナルトレーナー、相支走愛(神戸)の野見山健治です。
先日行われた全日本実業団女子駅伝の予選会である「プリンセス駅伝」in宗像・福津。すでにスポーツニュース以外も取り上げているので、ご存知の方も多いでしょう。(煽るだけの取り上げ方や、競技をやったこともなさそうな人たちが偉そうにコメントをしているのは見てて不快だけれど)
快走を見せる選手がいる一方で、アクシデントに見舞われる選手が複数出てしまいました。昨年もゴール間近で脱水症状により棄権を余儀なくされたチームも合ったこの大会。(参考記事:その過酷さを改めて感じる。)
残念なことに、今大会もそういうアクシデントが起こってしまいました。
思いを繋げ
1つは岩谷産業の2区飯田選手。後半にかかるまで快調に走っていたように見えたのですが、画面が切り替わったときには走るどころか立っていられない状態に。四つん這いになってまで襷をつないだシーンは衝撃的でした。どうやら脛骨の骨折とのことです。何が原因かはわかりませんが、中継地点が目視できる範囲で、自分の身体が動かせるのであれば、選手が自らやめることは考えにくいです。駅伝とは1人1人が全体の命運を握っているわけですから、簡単に「やめる」という選択肢にはいかないでしょう。
繋いだのはそこまで苦しいトレーニングを越えてきた自分自身やチームメイトの思いが込められていたからだと思います。どれほどの努力と思いが込められているのか、私たちには想像もできません。色んな所でそれを体験したこともない人が是非を言っていることには疑問しかありません。
監督はその様子に気付いたときに運営に棄権の連絡を入れていたようですが、うまく連携が取れずに競技続行となってしまったとのことです。
やめさせるかどうかという点が問題になっていますが、先に述べた選手自身の思いだけでなく、駅伝という種目には企業の宣伝効果という側面があることも否定はできません。「勝手に」運営の判断で辞めさせられるかというと、それは難しい気がします。今回の件が残り3km地点だったら、運営も止めたのかもしれませんが、中継地点が近かったことが決断出来なかったことの要因の1つでしょう。
ただチーム側から棄権の意志が出されていたのであれば、即座にやめさせてあげてほしかったです。
もっと大事なものがある
2つ目は続く3区。先頭を快走していた三井住友海上の岡本選手。序盤から後続を突き放す素晴らしい走りをしていました。このまま行くかと思っていたのですが、9km過ぎから異変が。
走っているフォームが明らかに崩れており、右側に身体が傾くように。
おかしいなと心配しながらみていたら、次に画面に映ったときには腰が完全に落ち、腕振りも明らかにおかしくなり蛇行をして、さっきまでの力強さやスピード感が全く失われていました。それだけでなく、どちらがコースか判断できない状態に陥っていました。目もうつろで視点が定まっていないように見えました。それでも進もうとするのは選手の本能以外の何物でもありません。
その後は「運よく」草むらに倒れこみ、大怪我にはならなかったようで少しだけ安心しました。
とはいえ、歩く足元も危うくいつ転倒してもおかしくない状態になっているのに、無意識に走ろうとしてしまう。これほど危険なことはないです。もしあの勢いで転倒したら、うまく手をついたりできずに頭から地面にぶつかってしまうおそれもありました。
こちらに関しては、周りがどう言ってもやめさせるべきだったと思います。素人が見ても明らかな異常ですし、命の危険さえあったからです。
どんなに守りたいものがあったとしても人の命にかえられるものはありません。どんなスポーツでも、安全があってはじめて競技として成り立ちます。安全が危ぶまれる状況があってはならないのです。ましてやそれが人の手で止められることであれば尚更です。安全第一!
たとえチームや選手から後から文句を言われたとしても、あの状況であれば運営側が強制的にやめさせてあげてほしかったです。
岡本選手のその後の状態がわかりませんが、回復していてほしいです。
選手だけでなく自分にも起きること
今回の大会に関しては、1区間は長くても10km程度。長距離をやっている選手からすると、走りきることに難しさを感じるような長い距離ではありません。しかし、10月はまだ暑さが残っていたりする中、「駅伝」という大きすぎるプレッシャーを抱えて走るのは相当な負担になることが予想されます。
その負担を考える。そして選手やチームスタッフも、簡単なことをやっているわけじゃないと改めて十分な配慮をすることが大事ではないでしょうか。
これは市民ランナーでも同じようなことが言えます。
「たった~だけ」。
「これくらい」。
慣れてくるとこういう感覚が少なからず出てきます。でも身体には負担がかかっていることには違いありません。寝不足や二日酔いだったり、明らかな体調不良の時もあるかもしれませんし、「なんか重い」というような微妙な感覚の違いかもしれません。
そういった時に甘く見てしまうのは賢明とはいえません。
今回のようなアクシデントは選手だけでなく、誰にでも起き得るものだと受け止めて、しっかりと体調を見極めて楽しく取り組んでいってほしいです。
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