壁にたいしてどう向かうか。

「理想の姿」に向かって共に歩むパーソナルトレーナー、相支走愛(神戸)の野見山健治です。

 

もうね、旬も過ぎまくってますけどね。
世界陸上をやっていて、ほぼ毎日中継の種目はチェックしました。それぞれの記録や順位には当然ながら注目が集まります。
世界記録の誕生、過去最高の成績・史上初のメダルなどはやはり興奮と感動を呼びます。

 

世界記録となった男子棒高跳びのデュプランティス選手(6m21cm)は評判通りの強さでしたし、女子400mハードルのマクローフリン選手(50秒68)、女子100mハードルのアムセン選手(12秒12※決勝では参考記録ながらこの記録を上回った)などは大幅な更新でしばらくは残ると思われるほどの抜き出た記録でした。
(そんな中まだ残っているジョイナーの記録ってとんでもないな…)

 

北口榛花選手(やり投)では日本女子選手がフィールド種目で史上初のメダル獲得となりました。しかも最終6投目で逆転という勝負強さも見せてくれました。

また男子の400m×4リレーではアジア記録で決勝4位とメダルまであと少しと迫るほどでした。(しかも選手たちが喜ぶより悔しがっていたのが印象的)

 
それぞれ私は録画で見ていたのですが、思わず声をあげてしまいました(笑)

 

今大会でもメダルを3つ獲得した競歩やマラソンなどの持久系種目は他に比べると日本選手に向いている気がしますが、瞬発系やパワー系種目でそういう姿を見られるとは…
本当に驚きですし、興奮しました。

 

コロナの影響

新型コロナの影響はまだまだ大きく、今大会でも渡航前に発覚して出国できなかった選手や現地にて陽性判定などにより参加が出来なかった選手もいました。
短い選手生命の中でピークを合わせてきた苦労を考えると、何とも言えない気持ちになります…

 

特に女子マラソンの日本代表は大変な状況になりました。
3名の代表のうち、一山麻緒選手、新谷仁美選手は陽性判定を受け、松田瑞生選手のみとなりました。
 

その前日に行われた男子マラソンは序盤スローペースでしたが、女子は最初から超ハイペースで集団が形成される一方、松田選手は第2集団からさらに後方で一定のペースを刻む走りを展開しました。

女子マラソンのレース序盤の様子

 

前方から落ちてくる選手を拾っていく形で、ほぼ単独走となりました。
3人での作戦や協力も出来ないという意味で、まさに「孤軍奮闘」という形。

 

そんな中でも世界選手権では日本女子最高記録(2時間23分49秒)で入賞まであと一歩に迫る9位に入りました。
難しい展開の中で十分に強さは見せてくれましたし、イレギュラーな状況でのこのパフォーマンスは素晴らしかったと思います。

 

本人は「申し訳ない気持ちでいっぱい」という内容のコメントで涙をしていましたが、サポートをしているスタッフや家族の人たちは十分にその走りを通して思いは伝わっていたと思います。
思いを背負って強くなれる選手もいれば、重荷になってしまうこともあり得ます。背負いきれないものは背負う必要はないと思います。

 

松田選手の場合は前者であるような気がします。
申し訳ない、と感じる必要なんて全くないと言いたい。

 

一ファンとして心からお疲れさまでした。

 

世界との壁

松田選手、そして男子マラソンでの日本最上位に入った西山雄介選手(2時間8分36秒)はそれぞれ世界選手権における日本人最高タイムでした。
でも入賞さえできず。

 

かつてはメダルや入賞の可能性が他種目より高かったマラソンでは、現在世界の高い壁に跳ね返されています。

 

今大会を見ていても、優勝した選手やその展開からすると「勝負にならなかった」というのが率直に感じた印象です。
男子は中盤からの揺さぶり、後半の大幅なペースアップに対応できず。
女子はそもそも勝負の舞台に立たせてもらえないほどのハイペースの展開。

 

ただ日本の選手の平均記録はここ数年確実に上がってきています。
これはMGCの取組の成果や好記録を出す選手が身近にいることなどの相乗効果もあって、いろんな選手が次々に出ていることから明らかですし、実際に選手自体の意識も変わってきていると思います。

 

しかし、「勝負」になると物足りなさを感じることもわかってきました。

まだようやく2時間4分台に入ったばかりの日本記録(男子)にとって、1~2分台のベストを持つ選手と戦うのは容易ではないはずです。女子にとっても自己記録より3~5分程度速い選手に勝つのは難しいのは間違いありません。

 

もし「勝つ」ということに目を向けるのであれば、走力の向上に加えて勝つための戦略を磨き上げる必要があると思います。
その場の展開に合わせて対応することは地力がないと難しい。
ですから、自分の力を発揮できる展開に持ち込むのを「当たり前」にしていく取り組みが大事ではないかと。

 

たとえば一瞬のキレで勝負が出来ないのなら、主導権を握って(そもそもそれが簡単ではないのは承知の上で)振り落としていくような走りなど勝つための走りを意識したトレーニングをしていく必要になってくるでしょう。
そのためのハイペースで押していく練習とか、逆に前半は抑えて中盤から極端なペース変化を付けるといったトレーニングは当然やっているでしょうけど、今まで以上に特化させていくのです。

 

自分の戦い方を決めてそれに特化していく。
それくらい極端にやらないと、現状世界とは戦いにならないのではと思っています。

 

 

壁の向こう側に行くためには、壁を乗り越えてもいいし、迂回して反対に移動してもいいし、なんならぶち壊してしまってもいいわけです。


いろんなやり方を模索して、また世界のトップ争いをしている日本選手を見たい。

 

 

部外者だから簡単に言えることであるというのは承知の上で、今はまだその目線になっていない気がします。
それぞれの選手の特長を生かした練習などでまた世界に迫ってほしいと感じます。

 

なれるはず。

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