最後にひと花。

「理想の姿」に向かって共に歩むパーソナルトレーナー、相支走愛(神戸)の野見山健治です。

 

昨日はびわ湖毎日マラソンが開催されました。国際陸連でゴールドラベルになっており、今回で76回目の開催。多くの名ランナーが駆け抜けた歴史ある大会ですが、ここのところは東京マラソンなどに有力選手が流れていたというのが事実。
そういうことも影響があるのか、今年が残念ながら最後の開催(※来年からは大阪マラソンと統合されるそうで、「終了」とはちょっと違うようです)。

 

コースとしては平津峠以外はほぼ平坦ながら、特に終盤に向かい風の影響を受けやすい場所とされており、過去のデータを見てもタイムが出やすいコースとは言えません。

 

 

それでも昨年の大会は天候がかなり悪かったですが、それでも自己記録を更新する選手が多数出るなどレベルが上がってきていることを感じさせてくれる展開でした(参考記事:底上げ)。

 

今年はどうなるか。369人がスタートを切りました。

例年なら3分ペースが先頭集団となりますが、今大会は第1グループが2分58秒、第2グループが3分の設定という設定。
速めなのでどうなるのか?と思っていたのですが、ふたを開けてみたら大集団!

 

これは第2集団の中間地点通過時。例年ならここが先頭集団になるのですが、ここ数年でもここまでの大集団という展開はほとんどなかったと思います。
先頭集団はここからさらに40秒以上速く、そこにも約20名がいるというレベルの高さ。
しかもこういう状況ですから、海外からの招待選手がおらず国内選手のみでこんな状態。

 

レベルの高さもそうですが、こんなに積極的な姿勢を見せる選手が多いというのも驚き。

 

 

36km過ぎ、スペシャルドリンクを取れなかった鈴木健吾選手が一気にスパート。

 

一瞬の切れ味で勝負というわけではなく、そこから手を緩めることなくぐいぐい攻める。それ以降の力強さはけた違いでした。最終盤にもかかわらず2分50秒そこそこのLapを次々とたたき出す。
1km毎のLapが実況に伝えられる際、毎回実況・解説共に一瞬言葉を失うほど今までは考えられない爆発的なスパートを継続させました。

最後の2.195kmは6分台なら速い方なのですが、鈴木選手は6分16秒!終盤の走りだけなら世界と十分にわたりあえる素晴らしい走り!

 

昨年東京マラソンで大迫傑選手が出した2時間5分29秒を大きく上回る2時間4分56秒で優勝。日本人選手として史上初めて4分台という文句なしの日本新記録。

 

鈴木選手は冒頭で少し触れた昨年大会も出場していましたが、このときは勝負に出た上で終盤失速していました。失速したとはいえ大崩れをしなかったこと、そして勝負に出たという経験が今回生きたのではないかと思います。あのタイミングでのスパートは、そういう経験からの勝負勘という印象が強いです。

 

有終の美、のような

優勝した鈴木選手だけでなく、上位15名が7分台、サブテンに至っては42名というとんでもなくハイレベルな結果となりました。そのうち40名が日本人選手というのが信じられない。

 

風向きや気温という気候の記録への影響は大きいのがマラソンという種目です。今回は気温が高すぎず、太陽も照り付けず、かつ風向きも後半に追うというこれ以上ないコンディションだったようです。

だとしても、それだけでここまで全体が好走することは考えられません。

 

 

て昨今の日本選手の意識の改革、そしてそれに伴う走力の向上は数字から明らかです。

解説の高岡さんも言っていましたが、選手自身の意識が数段高くなっていることが影響しているといえるでしょう。ここ数年、長距離界において記録更新が相次ぎ、以前での常識が通用しなくなっています。
たとえばちょっと前までは「1km3分は速い」「サブテン(2時間10分以内)は難しい」と考えていたところがあったのかもしれません。それを周囲の選手が乗り越えていくことでイメージを壊し、メンタルブロックを取り除いていけているのです。身近な選手が記録することで「自分にも出来る」と考えやすいと言えるでしょう。

 

さらに昨年からの好記録が続いていることには、コロナによる調整の変化なども少なからず影響していると私は考えています。トレーニング方法、レースへの調整、大会の数などにはかなり変化が出てきているはずですから。
他にももちろんシューズなどのツールの向上という側面もあるでしょう。

 

ともあれ総合的にレベルが上がってきているということを改めて感じさせてくれる興奮を覚える結果となりました。

 

これが最後のびわ湖毎日マラソンというのが寂しいですが、文字通り歴史に残るような結果で、これまでの長い歴史に幕を下ろしました。

  

これから引き継がれる大会にも、この流れが続くように。そして新たな歴史を刻む舞台に成長していきますように。