「理想の姿」に向かって共に歩むパーソナルトレーナー、相支走愛(神戸)の野見山健治です。
今日行われたボクシング。ワールドボクシングスーパーシリーズ(WBSS)の決勝。チャンピオンばかりが出てくる、まさに頂点を争う戦い。(参考記事:王者からも学ぶ)
バンタム級のその舞台に上がったのは”The Monster”とさえ呼ばれる井上尚弥選手と5階級制覇という異次元の実績を持ち「フィリピンの閃光」の異名を持つノニト・ドネア選手。
尚弥選手は過去にドネア選手と練習をしたことがあるだけでなく、彼自身がドネア選手の戦いに憧れを抱いていたそうです。ドネア選手も認める才能とのぶつかり合い。お互い認め合う者同士が頂点を争う。それだけで凄いことです。
試合が始まると、お互いに一歩も引かず緊張感のあるパンチや駆け引きの応酬。そして過去に見たことのない場面もたくさん。
特にここ数戦は圧倒的な強さで早いラウンドでKO勝ちをおさめてきた井上選手ですが、この相手はそうさせてくれませんでした。2回には強烈な左で瞼をカット。その後には鼻からも流血。今まで顔に負傷をする姿を試合で見たことがなかったこともあり、ドネア選手の凄さを改めて感じました。
パンチでのカットのため、流血が酷くなってレフェリーストップの場合はTKO負けとなる。そうならないように、右のガードを高くする井上選手。決してガードが緩い選手ではないですが、あそこまで高い位置に構える姿は初めて見ました。
9ラウンドには、クリーンヒットを当てられた井上選手がひざを折りぐらつく場面も。さらにクリンチにいこうという動きは今までに見せたことがなかったように思います。
それだけギリギリの戦いだったのかもしれません。
それでも終盤には前に出て、強烈なボディでドネア選手からダウンを奪う。
最後まで息のつけない双方の攻防が続く見ごたえのある試合でした。
判定に持ち込まれましたが、採点は3-0で井上選手の勝利。
試合の中身や本人の感覚的には知る由もありませんが、見た目でここまで追い込まれたのは初めてだったように思います。それでも打たれたことや強いパンチへの対応、カットや流血を超えるなど今までにない経験を踏んだといえます。
知らないことを経験することは成長につながります。これは試合であろうとトレーニングであろうと同じ事。この経験を経て、今後さらに大きな力に変わっていくのではないかという期待さえ感じます。
違いを感じた
その試合の前に行われたのがWBC世界バンタム級の王座統一戦。戦ったのは暫定王者の井上拓真選手(尚弥選手の弟)と王者ウバーリ選手でした。井上尚弥選手、ドネア選手の一戦と同じ階級。しかも世界戦。にもかかわらず、レベルの違いが大きく感じられました。
団体の中でのトップを目指す戦いと、全ての団体の中でのトップを目指す戦い。違いは歴然でした。
開始直後からのスピード感。そしてパンチの応酬や距離間の駆け引き。素人が見ていても感じられる緊張感。当の本人や経験者はその凄さをより感じられたのではないでしょうか。
今は暫定王者やスーパー王者など団体内でも複数の王者がいたりします。このあたりをもう一度見直していくと価値も出せるような気もします。
試合後に井上尚弥選手は「楽しかった」と。こういう高い次元だからこそ感じられるものがあったのでしょう。そしてその経験をしたことで、さらなる成長もあるかもしれません。今後もビッグマッチが組まれていく可能性が大いにあります。それをも超えていく姿を期待せずにはいられません。
ドネア選手は本当に強かった。でも井上選手も強かった。最高の試合であったと同時に、相手を称える精神。本当にすがすがしい試合でした。こういう試合が人の目に触れていけば、もっと人気も高まるのではないかと思います。