「理想の姿」に向かって共に歩むパーソナルトレーナー、相支走愛(神戸)の野見山健治です。
マラソンシーズン、最後の追い込み…じゃないけれど今日も数多くの大会が全国各地で開催されていました。
今日走られた皆様、そしてスタッフや応援で走り回った皆様、お疲れさまでした!
比較的大きなフルマラソンだけに注目しても鹿児島や篠山ABC、そして何と言っても東京マラソン。ここ数年好記録が出ていますし、有力な選手も多数出場。記録だけじゃなく、MGCの出場権争いと言う面でも盛り上がるのは必然ですね。
スタートは圧巻ですね。
雨で奪われる
気温は6℃前後。最高でも8℃ほどの冷え込み。それに加えての雨模様。寒さがレースを難しくすると思いました。
寒ければ寒いほど、当然ですが体温が下がります。その体温を上げるため(生きるための活動として)エネルギーを消費します。これは避けられません。ただでさえ過酷なフルマラソンがこの気温で行われると負担はより大きくなります。(個人差はあります)
速く走れば走るほど風を感じますし、その分熱も奪われます。ですから、トップランナーに比べて相対的にゆっくり走るランナーはその風を感じる度合いが少なくなる分、同じ時間の長さであれば負担は小さくなります。ただしゴールするまでの時間が延びるので、結局どちらが楽とは言えませんが。
スタートをしてみると、男子の方は序盤からペースメーカーがペースブレーカーといえるほど設定タイムより速く走る展開に(そういう指示があったのだろうか?)。最初の10kmが29分10秒。設定タイム通りに行くと29分30秒ほどのはず。しかも、入りは2分48秒という速さでした。いくら何でも速いなと。
うまく帳尻を合わせるにしても、ペースの上げ下げがある場合と一定ペースで走るのなら一定の方が負担も小さいのはランナーであれば想像がつくと思います。
この時点ですでに後半のサバイバルの色が濃くなる予感。
実際に後半に入り、日本人選手の中で最もマスコミの注目を集めていた大迫選手が遅れていく。走るのをやめたときには画面で見てわかるレベルで身体が震えていました。低体温症のような症状があったのではないでしょうか。タイムどうこう以前に身体に異常が出たり危険を察知したらやめる勇気も大事。このレベルの選手ではそれが周囲からの「ダメだし」に繋がりかねませんが、今後を考えたら賢明な判断です。無理することは何にも繋がらないのですから。怪我などでなければ良いなと思います。
そして同じく先頭集団にいた中村選手も遅れていき、さらには最後まで食らいついていた佐藤選手もじわじわと遅れていき始めた。動きを見ている範囲では最も大きな原因はどちらもおそらく脚の異常ではなく、体力(体温)などによる失速だと推測します。
このように雨によって体温を奪われていく(と思われる)選手が増えていきました。
強さを見せた
その一方で、先頭に立ったレゲセ選手。25km過ぎくらいから、ペーサーをすでに煽るような位置取り。30kmでペーサーが離れてからは、誰が見てもわかるレベルでのペースアップ。一気に勝負に出ました。カロキ選手がつこうとしましたが、それを許さずむしろ引き離す。
終盤も目立った衰えもなく最後まで走り切り2時間4分48秒で優勝!凄い!ゴール後にもまだ足取りはしっかりしていて、余裕もありそうに感じた。これが今の世界なんだなと。
でもこのタイムでさえ世界記録とタイムだけで比較したら、さらに約1kmも先を走っているわけで…そう考えると日本との差はまだまだ大きい。
女子の方は、中継でほとんど映らずあまり展開はわかりませんでしたが、感じたことはペースメーカー周辺の一般男子ランナーが多くて走りにくそうだなという点。ペーサーがいると指標にもなるし楽なのはわかるけども、あくまで女子ランナーのためのペーサーだったのでは?周囲のランナーは位置取りとかもう少し考えてあげられたらいいのかなと、見る範囲では感じました。(実際のことはわかりませんが。)
女子の優勝タイムはアガ選手の2時間20分40秒。彼女自身のベスト記録には及ばずも、寒さが苦手な印象のあるエチオピアの選手がこのタイムと言うのはさすがという感じ。こちらも強さを見せつけました。この選手でさえ大会の優勝が初めてと言うのですから、いかにレベルが高いかがわかります。
日本人トップとなった一山選手はフルマラソン初挑戦ながら、2時間24分33秒の記録でゴール。残念ながらMGCを取るには24分00秒をきる必要があったので確定とはいきませんでしたが、来月のロンドンにも挑戦するとのこと。間隔は狭い気がしますが、長い目で見てこの経験を今後に繋げてもらえたら24年には面白い存在になるのではないかと思います。
実況では先頭を走る選手に対して「日本のライバルになります」などと言っていたが、現段階では男女ともに日本人選手が世界からライバルと見られることはないのが現実だろう。少しでも近づいてほしい。
男女問わず、今回のような寒いコンディションで走った選手の中でも記録を出せた人もいる。そう考えると必ずしも悪いコンディションだったといいきれるわけでもない(楽だったわけでもないが)。もちろん体質や普段の環境などもあるので一概には言えないが、あらゆるものに想定と準備を進めて、ロスを最低限に抑える技術も必要になってくるのだろう。
MGC争いでは、ほとんど注目されていなかった中央大学の堀尾選手が日本人トップになり学生では初の出場権獲得。つづいたベテランの今井選手、さらには藤川選手が順位+タイムをクリアして獲得。さらには2レースでの平均タイムで決まるワイルドカードで神野選手が終盤粘り獲得。同じくワイルドカードの可能性があった一色選手は4秒届かず出場権獲得はならなかった。
数字で見ると少し物足りないと感じる方も多いとは思うが、これだけたくさんの名前が出るようになったことがMGCの効果だと思う。全体の底上げにはつながっているはず。あとはその中から突き出た選手が出てくれば、さらに活性化するんじゃないだろうか。
来週はびわ湖。そして海外レースもまだ可能性がある。
9月に向けて、そして来年のオリンピックに向けて楽しみ。
心に響いたシーン
レースも終盤、第2集団から堀尾選手、藤川選手、今井選手らが上位を追い上げていく場面。
高久選手を抜いた場面でも見えましたが、藤川選手を今井選手が追い抜く時。今井選手は沿道に目をやって、右手で胸をたたき。
左手で沿道を指さすようなしぐさ。
おそらく応援があったんでしょう。
これだけのトップ選手でも応援は力になるんだと感じました。それと共に、こういう気持ちで走るタイプの選手は個人的にとても好き。ひとまずMGCへの参加も決まって、なんとなく嬉しい気分です。部外者ですけど(笑)
蛇足。
優勝者インタビューをするのは、自然な流れとなっている。
でも、あの雨の中42kmを走りきってきた選手が雨ざらし。
一方大会のお偉いさんたちは着物を着たお姉さんに傘を差させて自分は濡れない状態。場所の変更が出来なかったにしても、なぜ選手に傘をささなかったのでしょう?
これがランナーへの敬意でしょうか。これが世界に誇ると自称している東京マラソンクオリティですか?
アスリートファーストと言う言葉は何だったんですか?それともこの人がいう「アスリート」は雨にも濡れるべきという考えなんですかね。
しかもそのうち一人はポケットに手を入れていた。揚げ足取りみたいですが、来年オリンピックを開催する都市の大会であることが残念極まりない。
放送が日本人選手中心になるのはまだ仕方がないとして、優勝者が話している姿を映さない(途中からワイプで映ってましたが)のもおかしい。そんなに映さないのなら、濡れない暖かい場所に移動をしてからでいいじゃないか。(いや、むしろ映るとしても濡れない場所にしてあげてほしかった)
運営の人、そしてお偉いさんがいるから大会は出来るのも事実。でもだからその人たちありきというのはおかしい。もっと選手に敬意を払うべきなんじゃないか。
いろんな意見があると思うけれど、選手の安全と健康を守ることは最優先にしてほしい。レースが終わればもういいというわけじゃない。
これを反省材料として、今後に生かしていただきたい。