JRTA(日本ランニングトレーナー協会)認定ランニングインストラクターの野見山健治です。
年末年始は全国高校駅伝、富士山女子駅伝から、ニューイヤー駅伝、箱根駅伝、そして皇后杯、天皇杯と大きな駅伝大会が目白押しでした。
高校、大学、実業団と男女含めてすでに開催された注目大会だけでもたくさんありましたね。
旭化成の純正日本人チームによる古豪復活Vや青山学院の3連覇も凄かったですが、女子の都道府県対抗駅伝(皇后杯)の雪の中の熱戦、そして最終区の争い。
男子の都道府県対抗も優勝、3位、入賞など、どこを切り取っても非常に見応えのあるレースがたくさん繰り広げられました。
個人的には福岡県出身で、長野県で6年間過ごしていたので今日の天皇杯(この呼び名に全く慣れません)の優勝争いを観戦していて非常に熱が入りました。
それ以外でも市区町村レベルでの大会や中学生以下の大会も数多くあります。
そういう市民レベルのものは画面で見ることはほとんどありませんが、どのカテゴリーの大会であっても共通して言えることがあります。
「精神的に余裕のある走りが出来れば強い」。
メンタルの余裕がもたらすもの。
精神的な余裕はどんな効果をもたらすのでしょうか。
もちろん選手にある程度の土台があることは前提ではありますが、先頭でリードを奪って襷を受け取った選手はマイペースで入ることが出来ます。
「ブレーキにならなければ大丈夫」というような精神的な余裕を持って自分の走りに集中ができるため大崩れするリスクも下がりますし、中盤以降ペースを上げる体力的な余裕を持つことも可能です。
その結果、持っている力を出し切れる可能性が高まります。
一方、上位を追い上げようというチーム(特に上位の常連チーム)は「追いつかなくては!」という意識が強く働くため、オーバーペース気味に突っ込むことが多いように見受けられます。
その突っ込んだペースの時に一気に追いつき並ぶか前に出られれば、気持ちが強い選手ほど勢いづき実力を超える好走が出来たり、踏ん張ることも出来る可能性が高まります。
一方、差を詰め切れなかった場合は、一旦詰められても逆にズルズルと差を広げられてしまうというシーンを多く目にします。
追っていく選手の方が前を行く選手よりもトラックでの持ちタイムが絶対的に良いという場合でも、こういうことはあり得ます。
精神的な余裕の少なさが、体力の余裕を奪い、突っ込んで作ったタイムの貯金さえなくなってしまうのです。
もちろん各個人の考え方や走りの特性も関係しているので、一概には言えませんがこの傾向が強いことはきっとあなたも感じていることだと思います。
これは駅伝に限ったことではありません。
駅伝から学び取れること。
駅伝じゃないから自分には関係ないと考えるのはもったいないことです。
十分に生かせる要素が含まれているからです。
マラソンでタイムを狙って走っている場合、どうしても突っ込んでしまうランナーは多いと感じます。
それだと終盤苦しいばかりか、何より楽しくありませんよね。
失速のリスクも高まります。
短い距離であれば多少突っ込んでもどうにか持ちこたえることは出来るかもしれませんが、距離が長くなるほどにごまかしが利かなくなります。
まさに追いかけるランナーの心理と似ているのではないでしょうか。
フルマラソンにおいて、陸上経験などのない市民ランナーが取り組み始め、完走にめどが立ってくるとサブ4(4時間を切ること)やサブ5などを目標に挙げるようになります。
例えば、サブ4を均等に走りきるとしたらAve.5分41秒/kmのペースが必要になります。
そのランナーがハーフマラソンを走るかのようにAve.5分20秒/kmペースで中間点まで走ったとしましょう。
恐らくギリギリサブ4を狙える走力のランナーの場合、余裕は多くないでしょう。
その段階で「まだ半分」もあると感じている可能性が高いです。
でも出来た貯金は7分ちょっとです。
歩いたり失速をしてしまうと5km、10kmで吐きだしかねない貯金なのです。
タイムの貯金をすると、体力を大きく消耗します。
この時点で「もう半分」と思えていればいいのですが、完走には不安のない方でないとかなり難しいと思います。
少なくとも前半は余裕を持って走りたいものです。
これは一昨年前の諏訪湖マラソンでの私の画像です。
当時の自己記録を2分ほど更新した大会ですが、その時の13km地点くらいでしょうか。
すでに中間点は過ぎていますが、かなり余裕があるように見えます。
実際にここからギアを入れ替えて、ペースを上げていきました。
いかに自分のリズムを守って、「まだいつでも上げられる」というような精神的な余裕を残せるかが後半も失速せず、楽しく走れるかのカギだと考えています。
そのためには普段自分が走っている時の呼吸や心拍数を把握し、どれくらいのペースであれば余裕があるのかというのをしっかりと理解しておくことが大事です。
朝起きたら突然速くなっていたなんてことがない限り、それを大きく上回ることはありえません。
もしそんな方法があるならこっそりと教えてください(笑)
自分を制して、余裕を作り、後半につなぐ走力を培う。
この地道な繰り返しが記録の向上に繋がっていくのです。
まだこれから本命レースを迎えるという方も少なくないと思います。
小さなタイムの貯金よりも、大きな精神的な余裕を作ることを意識して走ってみてはいかがでしょうか。