MGCとレベル。

「理想の姿」に向かって共に歩むパーソナルトレーナー、相支走愛(神戸)の野見山健治です。

 

2020年の東京オリンピックに向けての代表選考会MGCが今年の9月に迫ってきました。そこまでの準備期間を考えると残された大会が限られてきた中、貴重な機会のひとつである大阪国際女子マラソンが27日に開催されました。

私もこの日の午前中、大阪の長居競技場より数キロ南の方で活動をしていたのですが、時折吹く風が冷たく、そして思ったより強い。気温はこのレベルのランナーであれば問題なさそうでしたが、風が課題になるかなと感じていました。

すでに権利を持っている小原選手は勝負にこだわれる。他の選手はまず権利取得に向けて日本人順位とタイムとの勝負。女子マラソンは男子に比べて出場権を持っている選手が少ないだけに、少しでも多くのランナーにとってもらって盛り上がってほしいところ。

 

 

レース展開は、ペースメーカーが2段階にわかれていたこともあってか、無理して先頭集団につく選手が多くなく、小さな集団で展開。序盤こそペースの調整があってLapも多少上下していましたが、全体的には落ち着いた流れ。

先頭集団は10名程度で推移。日本人選手の少なさは、フル全体を見ての戦略とみれば聞こえはいいのかもしれません。後方から追い上げられれば、戦略として成り立つのですが、結果論として後方集団からの追い上げが少なかったことを考えると物足りなかったなというのが率直な印象。

 

中盤以降は、画面から見ていても横風や向かい風が強そうな印象。何度か小原選手がペースを上げようとスパートをかけた場面もありましたが、そこでもタイムが上がりきっていなかったことを考えると、相当影響が大きかったのではないかと推測できます。

 

 

MGC出場権

今回の大会で東京オリンピックへの挑戦権を獲得したのは、全体で4位に入った中野選手だけでした。第2ペーサーの集団でじっくりと待機して、最後の2.195kmを全選手中最速で駆け抜け2時間27分39秒とギリギリのところで獲得。周りからのタイムや順位の声かけに反応してのラストスパートは見事でした。

その次に入ってきた阿部選手は2時間28分2秒とわずか2秒足りず出場権を今大会で獲得は出来ませんでした。最後の2.195kmでは全体2番目のタイムでしたし、競技場に入って最後必死に追っている姿が見えただけに、是非とってもらいたかった。それでもこのレベルで一気に自己ベストを8分近く縮めたのは凄いこと。厳しくはありますが、チャンスを掴んでほしい。

ワイルドカード(2戦での平均タイム)でも獲得が狙えた田中華絵選手も22秒届かず。

 

 

優勝したサド選手は長距離大国エチオピアの選手。優勝タイムは2時間25分39秒。「私の国では2時間19分、20分で走る選手がいて今回でオリンピックに選ばれるのは難しい」という発言は、まさに現状での世界との差ともいえるかもしれません。

27分、28分というMGCの権利を獲れないようでは世界と戦えないという意見があるのも事実ですが、まずはそれを獲らないと戦う権利さえ得られない。そういう意味では、ここに照準を合わせるのは当然。

 

今回取れなかった選手も、期間もチャンスも少ないですが本気なら行くしかないのかなと。残された国内レースは3月の名古屋ウィメンズマラソンのみ。海外のレースという選択肢もありますが、今からの準備では期間が短い。
ともあれ結果的に盛り上がって、レベルも上がればいうことはないですが、身体のことを考えると正直連戦は現実的ではないかとも思います。

 

意外と知られていない(?)気がするのが、MGC以外でもオリンピックへの道があるということ。

3枠のうち2枠はMGCで決まりますが、残り1枠はファイナルチャレンジと言う形で指定大会の中で最速で走った選手に決まります。勝負にこだわれるタイプの選手はMGC、最悪そこに間に合わない選手はファイナルチャレンジに勝負をかけて割り切ってしまうのもひとつの方法。

 

どうなるのか楽しみであると共に、レベルも雰囲気も上がっていってほしいと思います。

 

 

新たな試み

今回「ラップチャレンジ」という新たな試みもありました。上位8位までにゴールした選手の中で、30~35kmのスプリットタイムがもっとも良い選手に賞金50万円。またそのタイムが大会記録の16分19秒を上回った場合は、50万円上乗せ。上手くいけばこの区間だけで100万円を得られるというもの。

周知の方法が良くなかったのか、選手側が把握する努力をしていなかったのか、大会前の記者会見で初めて聞いたという選手もいたようですが…

 

 

30kmといえばペースメーカーが外れて、レースが動き出しやすい距離。最近の傾向を見ていると、動き出すどころか激流のようにペースが急上昇することも少なくありません。おそらくこの狙いとしては、自らレースを動かせる選手を求めているのかなと思います。あとはゴールタイムが良くなるように、けん制する展開を作りにくくするのかななどと。

現時点での状況を見ていると、日本人の女子選手がもし世界の選手と戦って勝とうとする場合、一瞬のスパート勝負では厳しいのが現実。トラック勝負なんて挑もうとする選手もほとんどいないでしょう。勝てるとしたらロングスパートや駆け引きで削って振り切るという展開しか今はないかもしれない。

そういう意味では35km~ではなく30km~としているのかなと感じます。もちろん違う見解や狙いもあるかもしれませんが。

 

 

結果としては、優勝したサド選手と2位で日本人トップになった小原選手と共に先頭集団を形成していた総合3位に入ったジェプキルイ選手が17分32秒で獲得。ここで大きくレースの変動があったというより、流れで取れたという感じでした。

運営側からすると、少し見当が外れたのかなと。

 

ただこれ一回で良し悪しを判断するのはまた違う。修正をかけながら、よりレベルの高いものを引き出すルールの1つになっていったら意味のあることだと思います。

 

 

一時期は女子が活躍する一方、男子が…という流れだったのがここ数年で一気に逆転した印象。男女共にレベルが上がっていくことを期待します。