助けは翼だった終盤。

「理想の姿」に向かって共に歩むパーソナルトレーナー、相支走愛(神戸)の野見山健治です。

  

いくつかのアクシデントに遭遇しながらも大きなダメージとはならず、なんとか深夜まで走り続けられた(参考記事:いろいろと起こる中盤)。
ここから最後まではエイドはない。ただ大きな峠もないことを確認できた。風も強くない。気持ちを切らさなければ、進むことはできるはず。

 

走り始める。

まだ走れる。

 

 

ただエイドで少々止まっていた影響で、さすがに寒くなってきた。時間は午前2時頃。後で調べると気温は7℃くらいまで落ちていたようだ。半袖では寒いはずである。
ただ朝日が昇るまで耐えられれば、どうにかなるはず。4~5時間。長袖も薄手ではあるが、走れるうちは大丈夫。

 

 

そう、走れるうちは。

 

このあと数キロ進んでナイトランの難しさを初めて知る。

 

「眠気」である。

 

 

想像はしていた。日中走っていても、疲労を感じたり気持ちが切れると眠くなることはある。
ただ言っても走っているわけである。数年前までは朝まで働くのが当たり前だった夜型人間でもある。どうにかなると思っていた。走れなくなることは想定していなかった。

 

 

甘かった。

どうにも眠い。ペース以前にただ走ることがままならない。

歩こうにも、まっすぐ歩くのにエネルギーが必要なのである。気を抜くと蛇行しそうになる。気を紛らわす人も景色も周りにはない。

 

 

少し考えて、寝ることを選んだ。

 

 

動きを止めて眠ると体温は確実に下がる。この状況で長時間眠ったら低体温の危険性もある。
仮眠でいい。5分眠れればスッキリする。
この短時間睡眠は、普段から取り入れているのでお手の物だ。問題はこの疲労感を抱えたマラニックという場面においてどこまで効果が出るかということ。

 

 

しかし、気持ちの中では効果の有無なんてもはやどうでもよかった。ただ目を閉じたかった。

 

駐車場(バスの旋回?)に入り込み、スタート以来初めて座った。携帯のアラームを8分後にセットして眠る。

 

 

ピピッ!

 

アラームの音。
一瞬で眠れていた。目は覚めた。だが体も冷めた。

寒っ!

 

 

立ち上がり、身体の状態を確認して、じっくり走り出す。この走り出す動作が苦痛になっていた。筋肉が悲鳴を上げている。
その悲鳴も数歩走ると忘れる。ニワトリのようである。

 

 

動かし続けているうちは痛みは不思議と感じない。走り続けることができれば問題なく進める。止まると痛い。
じゃあ走ればいい!簡単なことである。

 

 

ただその「簡単なこと」が簡単ではなくなってくるのが、この時間帯だった。いったんは眠気がおさまっても、すぐにまた押し寄せてくる。
それに屈すると脚の痛みを感じることになる。

 

そんなことを繰り返して9分/km前後にまでペースは落ちていた。

 

 

「とにかく体温を上げよう。」

 

 

上半身を意識的に動かし、たどり着いた次のコンビニでホットココアを飲んで一休み(午前3時20分頃)。店員さんからは「まだ(ランナー)きますか?」と尋ねられる。どうやらかなりの数のランナーが使用したようだ。数名来るはずだと伝えた。

 

ここからガーミンくんを手にもって充電をしながら走って進む。
右手にココア、左手に時計と充電器。手に何かを持って走ることはここまで負担になるとは…

 

 

走りにくさは感じたが、身体が温まってくるのは感じた。また動ける気がする。
実際にペースは7分台まで回復していた。

 

ガーミン君が制限時間の12時までは持つであろうバッテリーに回復したのを確認して、再び手首に装着して手が空いた状態で走れるようになった。
荷物を持ち換えたりすることで動きを止めたら、すかさず眠気が…油断もあったもんじゃない。

すかさず眠れる場所を探す。ブロック塀の隙間に入り込み、少しでも風を遮れる場所で座って寝る。また走る。

 

しばらく進むと、正面からくる車が声をかけてきた。

 

「大丈夫ですかー!」

 

ここまでも走っていることに興味を持ったドライバーから何度か声をかけられ会話をしていたが、この方はそれとは少し違って様子を見て走り去っていった。

 

なんだったんだ?

 

またさらに進んでいたら、今度は後ろからクラクションを鳴らされる。
さっきの車だ。

 

「この先のエイドもう下げちゃったから、なんか飲みますか?」と。

こんな深夜に!
運転席の隣には、リタイアをしたランナーが乗っていた。どうやらこの方を迎えに行ったようである。すごいサポート!

 

 

私は普段コーヒーをあまり飲まないのだが、勧められるがままにいただいた。紙コップに注がれたホットコーヒー。
持ちながら走る。いや、歩く。

 

 

飲み終えて、タイミングよくごみ箱も見つけ、また走り出した。体はもちろんのこと、心が温まった。
ゆっくりながら歩を進めると…

淡路市の表示。
確実に進んでいる。この目印でまた少し勇気が出た。

 

もうちょっとで朝日が昇るはず。なんとかそこまでは!

 

 

「♪にしからのぼったおひさまが~ひがし~へ~しず~む~♪」

頭の中に流れていた。バカボンのテーマ。太陽の動きはこの曲の反対だと覚えたのだ。


ん?今いるのは島の西側では?

 

じゃあダメじゃん!
 

水平線から昇る朝日をなぜか期待していたが、自分の歌で気づきショックを受ける。無駄なダメージ。

そんな表情。

 

気持ちが切れたのか、眠気に襲われまた眠る。10分程度は寝ただろうか。

 

制限時間まで残り6時間をきった。時計の表示は確か115kmくらいだった。余分に走ったのが5kmくらいだとして、残りが35km前後のはず。多分大丈夫だろう。

 

 

ただ頑張っても進まなくなってきている。疲労か。とりあえず次のコンビニまで…

 

身体が塩分を欲している。空腹感もある気がする。
そういえば、エイドからまともに食べていなかった。ハンガーノックかもしれん。

 

本当は蕎麦を食べるつもりだったが売り切れていたので、冷やし中華にした(また冷たいメニュー)。
このコンビニに着いたとき一人ランナーに追いついて「間に合いますかね?」なんて会話をした。あきらめなければいけるだろう、が共通の見解。彼は私が食事をしている間に走り去っていった。

 

少し長めの休憩をして、また走り出す。この瞬間がなんとも痛い。

 

 

明るくなり、車も通るようになってきた。バス停の存在にも気が付くようになった。手元の距離はすでに120kmを超えている。

 

ナイトランをしたい、地図を見ながら走りたい、過去最長距離を更新したい。

 

いずれもすでに達成した。
もう終わってもいいんじゃないか?

 

バス停を見つけては、時刻表やバス経路を確認した。タイミングが合えば乗って帰ろうかと何度も考えた。
何ならヒッチハイクしようかとも考えた。でもこのまま乗ったら匂いや汗が迷惑かな…

 

そんな風に具体的に乗るイメージまで沸いている。

 

ただ脚は止めずに前進。ちょっと歩きを入れては2km走り、また少し休んでは1~2km走る。
続けて3km以上走り続けるのは苦しくなっていた。でもこの緩急をつけて走れば、7分前後のペースになる。朝方食べたものが身体にいきわたってきたのも感じる。走るための工夫をしながら進む。

ただペースを平均すると時間内完走に「黄信号」となっていた。

 

 

 

残り25kmくらい。
地図には「約20kmコンビニなし」と絶望的な言葉が書いてある。

 

食事もしたし、ストックのおにぎりもお菓子も持っていたので通過した。
 

が、ふと「レッ〇ブル翼を授ける~」と頭をよぎった。
そういえば、夜中にコーヒーをいただいた後にも動けた。普段は飲まないが、奥の手としてカフェインに頼るのはありかもしれない。最後の頼み! 

 

100mほどではあったが、一度引き返してコンビニで翼を授かってみた。
授かったとしても翼の折れたエンジェルになるのか?羽ばたけるのか?

 

 

しばらく同じような状況で進む。

 

朝が来たからなのか、翼を授かったのかわからないがペースが上がってきた。
6分30~40秒台に回復。
呼吸にも余裕がある。

 

行ける!

 

 

もうバスのことは考えていなかった。不思議なものである。気持ちが前を向くと体も動くのだ。
 

歩くタイミングでおにぎりを食べ、また駆け出す。エネルギーになるであろう時間を逆算して補給も出来ている。深夜にはできていなかった。

 

 
遠くに明石海峡大橋も見えてきた。知っている場所に戻ってきた安心感。体も心も元気になった。いける!

 

ペースがぐんぐん上がる。我ながらどこにこんな力が。やはり翼か!(笑)

 

 

6分10秒台まで上がった。スタート直後と変わらない。
街中に入ると、前を行くランナーが次々と見えてくる。明らかに歩様がおかしくなっている方もいる。疲れ果てて歩く方もいる。足の激痛を訴える方もいた。
それぞれ少し声をかけながら、サンダルで走っている猛者とお話ししつつしばらく並走。

 

ランナーを見つけるとさらに気持ちが上がり、ペースも上がった。

もう大丈夫だ。やっぱり楽しい。

 

あとは曲がる場所さえ間違えなければOKだ。

 

 

慎重に地図を確認しながら曲がる。

 

手元の時計をどうしてもキリのいいところにしたくて、少し遠回りをして…


 

 


 

無事時間内に完走!

  

 

走った(動いた)時間18時間31分。

走った距離150.0km。

経過時間は21時間40分弱。残りは約20分しかなかった。

逆算しながらではあったが、最後に翼が生えなかったら本当に危なかった。

 

 

 

結局すべての目標を無事に達成することができた。

 

今回挑戦して感じたのは「生きている」ということ。当たり前のことだけど意識することは多くない。
なんだか根幹に触れたような気がした。気がしただけだろうが。

 

 

 

残念だったのはどこかに立ち寄ったりマラニックらしいことをできなかったこと、そしてランナーとの交流があまりできなかったこと。

 

でも今の自分からしたら満点のパフォーマンス。2か月分を一晩で走ったんだから。

 

こんな素敵な場を作ってくださった運営の方に、心から感謝です。

ありがとうございます!

 

 

そして長々と読んでくださったあなたにも感謝。

facebook
facebook

JRTA ACADEMY (日本ランニングトレーナー協会)
http://www.runningtrainer.jp/