底上げ。

「理想の姿」に向かって共に歩むパーソナルトレーナー、相支走愛(神戸)の野見山健治です。

 

昨日は女子の名古屋ウィメンズマラソンとほぼ同時刻に男子の代表争いの最終戦びわ湖毎日マラソンも行われていました(参考記事:強さと裏打ち)。 

こちらも雨。風もありかなり冷たい雨のような印象。

 

 

そんな中、スタートの号砲がならないというまさかのトラブルで一度退場…いったん濡れて動かないまま10分待たされるのは辛かっただろう…

いっそ走ってしまえばそこまで気にならないのだけど(これも個人的な意見です)。

 

2時間5分台の記録をもつ有力な海外招待選手がいる中で、タイムが出にくいと言われているこのびわ湖で設定されたペースメーカーは3分/km。
この大会にしては速めの設定。しかし、オリンピックの代表争いという意味では大迫傑選手の2時間5分29秒の日本記録という高い壁。このペース通りに走るだけでは届かない。
ペーサーに合わせるのか、抜け出す選手もいるのか。どんな展開になるのか楽しみ。

 

 

雨でスタートを待たされた影響があったのか、走り出してのペースが定まらずやや遅れる流れ。普通よりも難しい状況になったのかもしれない。
3km以降は持ち直しましたが、風の影響などもあって数字上は安定せず上下が目立った(ただ走っている感覚で一定だったのであれば大きな問題はないと思う。どう感じていたのか知りたい)。

 

 

 

比較的平坦なコースではあっても、特有の風に加えて雨もあってじわじわと集団が小さくなっていくようなサバイバルの様相。耐久力を求められる中盤までの展開。
以前であれば、そのまま耐えれば勝負に絡むこともできたのですが、最近ではそこからギアチェンジをして仕掛けることが必要になってきています。誰がその仕掛けをするのか、仕掛けられたときに反応できるのはどの選手か。

 

周りの展開はもちろんですが、自分の身体の状態を冷静に見極めて攻めるのか一旦耐えるのかを判断する能力も求められそう。先週の大迫選手のように。

 

 

30kmを過ぎてチェベト、キプロティチ、モコカ選手という海外招待選手の3人がペースを上げて、それに反応したのは鈴木選手。
しかしじわじわと離される。

 

その一気のペースアップには反応せず後ろの集団に残った作田選手がリズムを上げて追い上げ、日本人最上位に浮上。奥野選手と共に先頭の3人を追う展開。

 

作田選手は奥野選手を振り切り、その後は単独走になりながらも粘りを見せて自己ベストを2分以上更新する2時間8分59秒で日本人トップ(全体4位)でゴール。

タイムは日本記録や代表争いから見ると物足りなく感じるかもしれませんが、このびわ湖で、しかも天候が良くない中で出したことを考えると素晴らしい結果と言えるでしょう。

 

ちなみに優勝はチェベト選手で2時間7分29秒。ベストタイムが2時間5分で「6分くらいを狙う」というコメントがあったようですが、その力を見せての優勝。悪コンディションでも対応できるところを見せました。地力が凄い。

 

 

 

底上げを感じる躍動

終盤まで先頭集団に残ったのは国内招待選手は鈴木健吾選手だけで、他は一般参加の選手。

鈴木選手はその後遅れて10分台に終わりましたが、一度勝負に出て大崩れしなかった走りは今後につながるでしょう。いや、繋げてほしい。

  

一方、最上位に入った作田選手をはじめ、上位に入った他の日本人選手は自分の出来ることに集中をしていたという印象。

特に作田選手のコメントでは、(30km過ぎの)ペースアップの際についていく力はないと思ったから自重したという内容のことを言っています。

 

さらに「(自分の練習の中で)最大限得られるものを探して練習をしていたので自信につながった」とのこと。

やはり何をやるかということも大事ですが、そこに何を求めるかを明確にすることは大事だと改めて感じます。

 

「マラソンの苦しさが生きていると感じる」と話した作田選手が、パリ五輪に向けてどんな生き様を見せてくれるのか楽しみ。

 

 

他の一般参加の選手たちも躍動をしました。
奥野選手は約10分、其田選手は約5分自己ベストを更新して、初マラソンの山本選手と共に2時間9分台のサブテンを記録。初マラソンで10分台を記録したのは吉岡選手。さらに11分台でしたが谷原選手はなんと20分以上更新。この次元でのこの更新幅は凄すぎる。

 

サブテンがなかなか出なかった数年前からしたら、全体的なレベルは確実に上がってきています。このMGCはその底上げに少なからず影響をしたとみて間違いないでしょう。
一旦これで区切りにはなりますが、この流れは何らかの形で継承してほしい。MGCは形を変えながらでも是非継続をしてほしいと思う。